長い梅雨が明けたと思ったら、暑い日が続きますね。暑い日は家から出ないのが一番ですが、少しでも外に出ると、溶けるように暑いです。
仮に家の中でじっとしていたとしても、
「2階の自分の部屋が暑すぎる!!」とか
「エアコンをつけたらすずしくなるけど電気代が。。。」とか
「外より家の中の方が暑く感じる」とか、しまいには
「電気代を無視してクーラー全開にしても全然涼しくならない!!!」
といった悩みがあるかもしれません。
そもそも 暑い!! とはどのような現象なのでしょうか?「暑さ」のことを正しく理解しないと、どのような対策によって快適な環境を得ることができるか分からないですよね。うだるような暑さも前では、デザイン的に美しい 吹き抜け や ガラス張り は致命的になることがあります。
今回のブログでは、人はどのようなときに暑く感じるのか(伝導・放射・対流+気化熱)について簡単に説明した後で、
「パッシブ」に暑さを避けるには
「アクティブ」に暑さを避けるには
という2つの基本的な分類に基づいて、灼熱地獄にしない家づくりのための8つの方法についてどのような対策を取るべきか述べたいと思います。
「暑さ対策が施された快適な温熱環境の住宅」を手に入れるには、「パッシブ」と「アクティブ」を適切に組み合わせる必要がありますが、そのためにはまずはそれらを良く知る必要があります。「パッシブデザイン」と耳にすることがあっても、パッシブとアクティブの違いが良く分からない方も多いのではないでしょうか。そのうえで、マンションや一戸建てに合わせて、適切な方法を採用する必要があります。
人はどのようなときに暑く感じるのか(伝導・放射・対流+気化熱)
温度が高いと不快に感じる?(伝導)
外気が25度の時と35度の時を比べると、当然35度の時の方が暑く不快に感じます。それでは同じ温度で異なる湿度の時、例えば「高い湿度(80%)の25度」と、「低い湿度(50%)の25度」を比べると、どちらが不快に感じるでしょうか?正解はもちろん「高い湿度(80%)の25度」です。雨が降る直前のムシムシした気持ち悪さは容易に想像できると思います。つまり、快適/不快の環境を実現するには、温度だけではなく湿度がとても重要な影響を与えます。
この快適/不快の差は、The psychrometric Chart(空気線図/湿り空気線図)と呼ばれるグラフで表すことができます。下図の黄色く着色されたエリアが「快適な状況」を表します。25度より高ければ(または20度より低ければ)、どのような湿度であれ不快に感じますし、80%より高い湿度(または20%より低い湿度)の場合は、気温がどのような温度であっても不快と感じることを示しています。
この快適範囲ですが、温度20℃~27℃、湿度40%~60% の範囲として示している記事(大阪は東京より蒸し暑い? 絶対湿度が示す快適条件 )もありました。快適性には国民性や地域差がありそうです。このように空気を媒体として、人間の肌に熱が伝わる状況を「伝導」と言います。
遠赤外線でホカホカに調理された石焼き芋?(放射)
それでは、気温と湿度が同じであれば、人は同じように快適/不快に感じるのでしょうか。皆さんも、アスファルトからの照り返しでジリジリと暑く感じたことはあるのではないでしょうか。同じ気温でも、床がアスファルトか土かで大きく違います。これは放射熱(一般的には輻射熱ともいう)による違いです。蓄熱したアスファルトからは、赤外線(電磁波)が発せられます。
夏の日中、都市の表面温度は非常に高くなります。高温の物体からは強い赤外線が輻射されるため、高温の表面に囲まれた都市部は暑くなるという(ヒートアイランドの原因に対する)説です。- 輻射熱は気温とは基本的に無関係です。気温が低くても熱いものが近くにあれば、暑さを感じます。(京都大学人間環境学研究科ウェブサイトより)
ちなみに、赤外線には波長の長さによって、近赤外線と遠赤外線があり、吸収される場所(温める場所)が異なるとされています。
近赤外線は人の体や食材などに吸収されやすいので表面はすぐに温まるのですが内側まで届かないので内側はなかなか温まりません。これに対して遠赤外線は近赤外より吸収され難いので内側まで届いて内側もゆっくり温まります。遠赤外線で体の芯から温まるという言葉を耳にしますが、これは本当に体の内側を温めているのですね。(公益財団法人 つくば科学万博記念財団ウェブサイトより)
フライパンで芋を調理しようとしても、熱したフライパンからの伝熱によって外側が焦げるだけで、芯まで調理することはできません。石焼き芋は、熱した石に接して直接伝熱で温められると同時に、熱した石から発する遠赤外線によって温められるため、外が焦げることなく芯までじっくりと調理することができるわけですね。
空気が既に熱い上に、遠赤外線の赤外線の放射熱でじっくり温められる石焼き芋のように、自分自身が間接加熱によって調理されていることを考えると、さらに暑さを感じて倒れそうです。。。
高いところにいるとさらに暑く感じる?(対流)
換気の悪いマンションの階段室では、低層階の気温よりも、高層階の気温の方が高いことがあります。これは暖かい空気は冷たい空気よりも低密度になるために、浮力によって上昇していきます。一方冷たい空気は下降するために、下階の階段室では涼しく感じます。ちなみに、12.5m程度の高低差がある通気のない階段室の温度差を比較してみると、7℃近い温度差がありました(都内8月12日15時頃)。
階段室の例を挙げましたが、吹き抜けやロフトがある建物にお住まいの方には、こうした温度差による影響を日々感じている方もいるかもしれません。これらは、あくまでも暖かい空気と冷たい空気の移動についての話です。ちなみに断熱が貧弱なマンションの最上階は、蓄熱された屋上からの熱で暑く感じることがありますが、これは対流ではなくてコンクリートスラブからの放射によるものです。
風が無いと暑く感じる?(気化熱)
熱が(人に)伝わるには、いままで上げた伝導・放射・対流の3つがあります。このブログでは、これらとは異なる視点から、気化熱の話を加えたいと思います。無風状態で汗をかいていた時でも、扇風機に当たると涼しく感じます。
気化熱とは液体の物質が気体になるときに周囲から吸収する熱のことです。液体が蒸発するためには熱が必要になります。その熱は液体が接しているものからうばって蒸発します。(大阪教育大学ウェブサイトより)
つまり汗(液体)が接している体から熱を奪って蒸発するために、涼しく感じるわけですね。打ち水も気化熱を利用し涼気を取る試みですが、水が蒸発するときに熱が奪われることを利用しています。
「パッシブ」に暑さを避けるには
そもそも家づくりにおいて「パッシブ」とはどのような意味なのでしょうか?Passive (パッシブ)直訳すると「受動性の、受身の」となりますが、これは例えば「暑さに対して受動的に対処する」という意味になります。具体的には、人間が環境に対してクーラーや扇風機などによって「積極的に(アクティブに)」働きかけをせずに、涼しくしようとする試みのことです。
パッシブシステム passive system
特別な機械装置を用いずに、建物自体の性能によって熱の流れを自然に制御し、暖かさ、涼しさの効果を得る方法。(日本建築学会編、建築学用語辞典 第2版より)
風や光といった自然エネルギーを、建築設計に積極的に活用する試みを、パッシブデザインと呼ぶこともあります。「パッシブ」な方法で暑さを避けるには、この光と風(空気)に配慮が必要となります。
太陽光や外気の熱を室内に取り入れない
冬にはあれほど恋しかった太陽光も、夏は避ける対象となります。暑さのことだけを考えれば、できる限り太陽が室内に入らないように開口部を設計すればよいのですが、冬のことを考えると、そうとも言ってられません。夏にできる限り太陽光を遮断し、冬にできる限り太陽光を取り入れることができるような、そんな都合の良いことが可能なのでしょうか?本ブログでは主に夏について述べたいと思います。
まず太陽は、東からのぼり、南中し、西に沈みます。そのため、建物の東面、南面、西面では異なるしつらえが必要となります。採光の点からと考えると、南面のことばかり考えがちですが、日中に暑くなった建物が、西日でさらに灼熱地獄となる場合も多いのではないでしょうか?こうした場合、庇やルーバー、さらに窓ガラスの仕様が大変重要になります。
太陽は季節によって高度を変えます。北緯およそ35度の東京の場合、夏至(6月21日)の太陽の南中高度はおよそ78°であり、冬至(12月22日)の時の太陽の南中高度はおよそ32°となります。この太陽の動きに対応するように、建物の設計を進める必要があります。
1. ルーバーをつける
東面と西面、つまり日の出と日の入りでは、対称的に光が入ります。低い角度から家の中にさすように入る光を遮るのは容易ではありません。「縦ルーバーは西日に有効」と巷で言われていますが、必ずしも正しくありません。上の図でも垂直ルーバーは西・南・東の全ての面に不適であると書かれています。幅1800㎜高さ1500㎜の西向きの開口部を、天井高さ2400㎜の部屋に設置したと想定して、どのようになるか簡単なシミュレーション動画で見てみましょう。
次に、巷で効果があると言われている縦ルーバーです。
8月15日の東京を前提とした簡単なシミュレーション結果ですが、どちらも、ルーバーが無い場合と比べて大差ないことが分かります。垂直ルーバーを用いるのならば、より奥行きが必要なのでしょう。
2. 庇を出す
太陽が南中する、いわば日中の最も暑い時、できる限り太陽を遮りたいと思いますが、庇の存在がとても重要です。できる限り深い庇をつけることによって、太陽光を遮ることができますが、同時に、庇を出しすぎると、冬の採光が損なわれます。一般的には、開口高さの1/3程度の庇を出せばよいと言われています。先ほどと同じように、幅3600㎜高さ2400㎜の南向きの開口部を想定して、簡単なシミュレーション動画を示します。
まずは庇のない場合です。
次に800㎜(開口高さ2400㎜の1/3)の場合です。
最後に1200㎜(開口高さ2400㎜の1/2)の場合です。
経験則で1/3と言われていますが、実際に正しいことがシミュレーションによって分かりました。ただし敷地にゆとりがない住宅密集地では、なかなかこの庇を出すことは難しいことかもしれません。。。
3. 屋根・外壁・開口部の仕様を上げる
外の暑い気温を遮断するためには、室内を包む屋根・外壁・開口部の仕様を上げる必要があります。その中で、遮熱と断熱について注意深く考慮する必要があります。
遮熱は文字通り、熱を遮ることです。特に太陽高度の高い夏は、熱エネルギーを最も受ける屋根の遮熱が重要です。ちなみにこの遮熱は、裏を返すと熱が欲しい冬には、逆にせっかくの太陽光を跳ね返すことにつながりますので、家づくりを行おうとしている立地(北海道か沖縄か)にもよるのではないでしょうか。
一方断熱は、熱を遮断することです。暑い外気の熱を取り入れず、一方、クーラーの涼しい空気を外に逃がさないということです。下の図によると、夏は開口部から73%もの熱が入ってくるのですから、開口部の仕様を上げることはとても重要です。断熱材は同じ製品であれば、厚ければ厚い方が性能が上がります。
本当に暑い時には、開口部は閉じてエアコンをつけているのではないでしょうか。窓ガラスを通じて光が入らないようにするためには、ガラスの仕様について、注意することが必要です。外側のガラス内側にLow-Eコーティングをしたペアガラスを採用することによって、放射による伝熱を少なくすることも可能です。さらに、ペアガラスをトリプルガラスや二重サッシにすることで、断熱性能を上げることも可能です。
アルミサッシ、合成樹脂製サッシ、木製サッシなど、窓枠には様々な素材があります。開口部として考えた場合、結露を防ぐ点で、サッシそのものの断熱性能を上げることは重要ですが、最も大切なのはガラスの性能を上げることです。なぜならば窓枠よりもガラスの方が外気に露出している面積は圧倒的に大きいのですから。
外壁の断熱材の存在も重要ですが、基礎や床下に断熱材を設置する場合は、実は防蟻が大変重要です。
厚い断熱材を設置したものの、シロアリに食べられてしまって断熱材自体が消失していたら何の意味もありません。ポリスチレンフォームや発泡ウレタンは蟻害を受けやすいので、防蟻処理された商品を採用することが大切です。
空気の流れをつくる
当たり前のことですが、人間の体は空気によって常に囲まれています。この空気をどのようにデザインするかが、灼熱地獄に陥らないための重要な視点となる訳です。
4. 通風を確保する
ガンガン空調をつけている最盛期は難しいですが、空調をつけるかつけないか迷っている中間期には、通風確保が望まれます。東京の場合、卓越風が南西から吹くようです。皆さんの地域の気象台の計測結果を見ることができますから、確認することをお勧めします。立地によって風向は大きく異なります。
また注意しなければならないことは、南から風が吹くと想定して設計案を作ることがままありますが、実はその通り成り立つことは非常に難しいといえます。東京の住宅密集地では周囲の建物が建て替わることによって、大きく影響を受けることがあります。
先程、階段室のことについて書きましたが、ある程度の高さのある住宅の設計に、この対流効果を取り入れることは可能です。無風状態でも、煙突効果によって風が動くことにより、同じ気温でも涼しく感じることができるようになります。
太陽に暖められた地表近くの空気が上昇する気流を煙突に集め、その気流で風力原動機を回して電気を得る再生可能エネルギー発電所(ソーラー・アップ・ドラフトタワー)もあるみたいです。この動画は暑い空気が上に上がることを分かりやすく示していますね。
Mount Holyoke College, Solar Chimney Tower Plantウェブサイトより
「アクティブ」に暑さを避けるには
家づくりにおいて、「パッシブデザイン」という言葉を聞くことがあっても、「アクティブデザイン」という言葉を聞くことはなかなかありません。? Active(アクティブ)を直訳すると「積極的な、活動的な」となります。環境に対して人間が積極的に作用する、一般的には自然エネルギーではなく、電気などの人工的なエネルギーを用いて暑さを避ける試みのことをいいます。
アクティブシステム active system
ある目的の達成に向けて機能するような機器類を有機的に組み合わせた装置。その作動は一般的にエネルギーを必要とする。(日本建築学会編、建築学用語辞典 第2版より)
5. 空調機を利用する
空調機すなわちクーラーです。クーラーなしに夏を過ごすことはできなくなってきました。技術の進歩によって、消費電気量も少なくなってきているようです。
クーラーの仕組みを理解する上で重要なのは、まず室内に設置されている「室内機」、屋外に設置されている「室外機」、そしてそれらをつなぐ「冷媒」の存在です。さらに、室内機から冷たい空気が吹き出されますが、同時にそれと同じだけ暑い空気が室外機から大気中に放出されていることが大切です。効率的に熱を放出するためには、室外機の前に適切な空きスペースがある必要がありますが、住宅密集地では難しい場合も多いようです。
一般的に「ルームエアコン」というと室内機と室外機が一対一対応しているもので、「マルチエアコン」というと、室外機1基に対して、室内機が複数台設置可能な商品です。屋外に室外機を設置する余裕があまりない場合などには、「マルチエアコン」は大変便利です。麻布永坂町のヴィンテージマンション改修プロジェクトでは、ダイキンのシステムマルチ導入し、空調機のみならず床暖房も設置しました。マンションのベランダのように、室外機の置き場所に制限がある場合には重宝します。ただし電気容量の確認、および冷媒・温水(床暖房ユニット)の配管経路確保には注意が必要です。
6.扇風機・サーキュレーターを利用する
空気自体を冷却する機能は備わっていませんが、扇風機やサーキュレーターも電気を使って風を起こします。室内の空気が流れることによって、空調機の冷気を拡散させてより心地よくすくことが可能です。「同じ気温下でも風が当たると、人体が発した熱が滞留しにくいうえ、汗の蒸発熱により体温を抑制し、涼しく感じる(wikiより)」と言われています。これは、先ほどお話しした液体の物質が気体になるときに周囲から吸収する熱(気化熱)によるものです。
ちなみに、サーキュレーターの使い方は、夏と冬で異なります。夏の場合、冷房からの冷気は基本下にたまります。この冷気を循環させることが重要です。暑い空気は自然に上昇するので、吹き抜けのある部屋で、部屋全体に冷気が循環するようにサーキュレーターを用いると、冷却する気積が増えてかえってエネルギーを消費するようになります。天井高さがそれほど高くない一般的な日本の住宅では、部屋当たりの空気の容積がそれほど大きくないので、あまり気にしなくてもよいかもしれません。
一方冬では、上昇する暖気を床面に運ぶために、部屋全体に拡散するようにサーキュレーターを設置する必要があります。
吹き抜け上部に設置された天井付きファンは、同じ役割を果たしています。ただし夏において、断熱の貧弱な屋根の下に設置された天井付きファンは、暑い空気を下階に吹き下ろす結果となります。風が流れることによって気化熱が奪われて涼しくなる効果は大きいですが、同時に電気代がかかるわりには必ずしも良い結果を生まない可能性もあります。ちなみに冬において、上階にたまった暖かい空気を拡散させて下階に運ぶ働きがあるので、下階が生活エリアの場合は特に有効です。
7.放射パネルを利用する
床暖房の様に、天井を冷却することによって、放射によって冷やす試みもあります。特に、クーラーによる風が苦手な人にとっては、とても心地よい方式です。埃が拡散することを避け居住性を高めるために、病院などでの採用が多いと聞いたことがありますが、住宅でも取り入れると良い方式だと思います。
冬の場合は、床材の下に温水パイプや電気パネルを設置することで、放射パネルの役割を果たします。一方夏の場合は、冷房のみならず冷温水輻射(放射)パネルとして縦型のパネルとして設置されることが多いようです。
放射パネルで注意すべき点は、室内湿度が高い時結露が発生することです。結露を発生させることによって除湿するという十分なメリットがありますが、同時に、結露受けを適切に配置し、他部材と断熱をして縁を切る必要があります。多くのメーカーが、商品開発を行っています。
放射冷暖房設備メーカーの老舗として、ピーエスは有名です。(上の放射パネルでもピーエスが参画しています)放射パネルのみで建物全体の冷暖房をまかない、全ての住人の温湿度に関するニーズを満たすことは難しいかもしれませんが、コストが合えば、空調や扇風機との併用を前提に導入されてみると良いでしょう。
冬の床暖房は床に設置されています。夏の冷房は天井に設置することが、頭寒足熱の点からも理にかなっています。オフィスのように、冷却負荷が高い建物には、向いている方法ですが、空調ほどには普及するに至っていません。コストと結露の問題からでしょうか?
ちなみに湿度の低いヨーロッパでは、日本ほど除湿に配慮しなくてよいので、天井放射冷房の実現性が高いと言えます。I.M.Pei設計のルクセンブルグ現代美術館(The Contemporary Art museum of Luxembourg)のスカイライトでは、スカイライト内側に設置されたアルミのルーバーに冷水が通り、空間全体を放射冷却しています。
8.水を利用する
気化熱について述べた時に、打ち水について触れました。実際に、家の前のアスファルトに打ち水をして効果を確認してみました。8月12日14時頃、道路の左半分に打ち水をして状況を記録します。水を撒いてから30分くらいして落ち着いてから、赤外線カメラで撮影してみました。
左側の紫色の部分は、打ち水をして冷えている部分です
もっとも冷えたところでも40℃近くあるようです
暑くなったマンホールは、50度近くにもなっています。やけどしそうですね。
打ち水はかなり効果がありそうですね。都市空間の中でミストによって冷やす試みもあります。六本木ヒルズのドライミストは有名ですね。ミストを大量に散布し、人がびしょびしょに濡れてしまってはいけないのですが、ミストが少量過ぎても涼しくなりません。蒸発しやすいような超微小な水滴を適度なあんばいで散布する必要がありそうなので、調整に工夫が必要そうですね。
環境省は「平成21年度ヒートアイランド現象による環境影響などに関する調査業務報告書」を公開しています。
その中で、霧噴射装置のヒートアイランド緩和効果について、測定値を公開しています。
ミスト噴射装置による効果は一般的に 2~3℃程度といわれている。屋外と半屋外でミスト噴射による気温低下効果を測定した事例6では、屋外空間では 1.5℃程度、半屋外空間では 2~3℃程度の気温低下効果が確認されている。 (平成21年度ヒートアイランド現象による環境影響などに関する調査業務報告書より)
つまり、完全な屋外よりも、庇や屋根がある半屋外空間の方が、ミスト噴霧の効果が高いようですね。先ほどの六本木ヒルズの事例でも、2~3℃程度気温低下の効果があると考えられます。
ただし、気温や湿度などの条件によってミストによる効果が異なることも指摘されている。気温、湿度、風速などとミストによる気温低減効果との関係を測定した事例では、気温は比較的低い温度帯からミスト効果(温度差)が見られるが、31℃を超える辺りから効果が大きくなる傾向が見られた。相対湿度については湿度 60%を超えないところで効果が見られた。(平成21年度ヒートアイランド現象による環境影響などに関する調査業務報告書より)
温度が低い場合または湿度が高い場合に、いくらミスト噴霧しても効果は少ないとのことです。先程のThe psychrometric Chart(空気線図/湿り空気線図)の話にも関連しますが、じめじめした天気やそれほど熱くない天気の時にミスト噴霧を受けても、それほど快適な感じはしないですよね。
ちなみに家庭用菜園の自動潅水装置が1万円以下で市販されています。潅水システムを住宅に組み込み気化熱利用により建物全体を冷却することも可能でしょう。冬期に凍結する地域では、水抜きなどの運用面が面倒そうですが。。。
まとめ
「パッシブ」により省エネをすすめ、効率的に「アクティブ」な機能を採用するという、両面を適切に組み合わせが、「灼熱地獄にならないための家づくり」につながるといえますね。長文読んでいただき、ありがとうございました。
最後に追記として。
環境性能を上げることは、自分自身が快適に過ごすことができるようになるばかりでなく、サステナブルな環境を次世代に伝えるためにも重要な取り組みです。世界的にも環境に配慮する意識が高まっています。建築物一般について 建築環境性能評価システム CASBEE と LEED の増加状況を比較してみた も併せてご覧ください。