つい先日、CASBEE評価員の登録更新手続きをしました。実は私、5年前に登録してから当建築設計事務所では一度も利活用していないペーパー評価員なのですが、CASBEE建築評価員とCASBEE戸建評価員の資格を(今のところは)持っています。。。利活用はしていないものの、建築設計事務所の所長として、また一建築設計者として、環境配慮型の建築を設計していく重要性を切に感じているため、CASBEE評価員の資格を取得した経緯があります。

建築の環境性能を評価する?

世の中には、様々な建築物があります。例えば、断熱材でくるまれた冷蔵庫・冷凍庫のような建物もあれば、ガラス張りで熱がダダ洩れの建物もあります。これらの建物について定量的・定性的に評価することができないと、これらを比較することができません。このように建物の環境性能を適切に評価することは、最終的には環境負荷の低いサステナブルな建物を設計・施工・維持管理することに繋がります。

環境性能を評価するシステムは、実は世界中にあります。CASBEEは日本、LEEDはアメリカ、他にもBREEAMという英国のシステムもあります。日本の建築プロジェクトでは、日本を前提に開発されたCASBEE以外にも、世界的に拡大しているLEEDの認証を得る試みも出てきています。

ここで知りたくなったのが、日本の建築マーケットに、どちらのシステムがどの程度浸透しているかということです。世界標準とガラパゴス化した日本の対比は、様々な分野で語られていますが、建築物という土着の人工物に対しては、どのような状況なのでしょうか。

CASBEEの活用状況について

CASBEEの開発は国土交通省の主導で2001年にスタートしました。以降、公的機関においてCASBEEを活用した助成制度や低利融資制度が実施されてきています。補助金によって環境性能をアップさせる試みですね。

また現在24地方公共団体において届出制度としてCASBEEが導入しているそうです。これらの自治体では、一定規模以上の建物の新築時、増改築時にはCASBEEの評価結果を提出することを義務付けているようです。届出数の類型は、2016年3月末までに1万8千件を超えています。

届出制度を導入している地方公共団体と届出数の推移(IBECウェブサイトより引用)

さらに一部の自治体では、CASBEEと連動した住宅ローンの金利優遇を実施したり、容積率緩和を行っているところもあるようです。このような地道な努力の結果、現在では600件を超える建築物が全国でCASBEE認証を取得しているようです。

CASBEE認証件数の推移(IBECウェブサイトより引用)

LEEDの活用状況について

LEEDは1993年に設立された民間の非営利団体USGBC (U.S. Green Building Council) によって普及活動がなされているアメリカで開発された環境性能評価システムです。2000年に格付けシステムが制定されてからは、世界的に急速に拡大しているようです。既に165か国以上の国でプロジェクトが存在し、LEEDの格付けを取得したプロジェクトは92,000に上るそうです(USGBCウェブサイトより) 。さすがアメリカはこのような制度をつくって広めるのがうまいですね。

プロジェクト総数を示すグラフは入手できなかったのですが、Colby Collegeという教育機関のウェブサイトから、アメリカ合衆国北東部に位置するメーン州の推移を入手しました。一般商業ビルと大学施設(官民とも)において急速に拡大していることが分かりますね。

Growth in LEED Certified buildings in Maine by project type (source: USGBC)

「米国を始めとした多国籍企業は、企業のブランドイメージを上げるために、自社ビルや保有不動産の環境性能を上げる傾向がある」と以前聞いたことがあります。このように商業ビルで拡大を続けているのを見ると、結構本当かもしれません。

日本では、USGBCの日本機関として「一般社団法人グリーンビルディングジャパン」略してGBJがあり、日本マーケットでの普及活動を行っています。そのウェブサイトによると日本でも着実にLEEDの格付けを取得したプロジェクトが増えているようです。

日本での認証件数(GBJウェブサイトより)

CASBEEとLEEDを比較して考えること

日本のマーケットでCASBEEとLEEDをざっくり比較すると、およそ6倍の認証件数の違いがあることが分かります。しかし実際のところ、新築・改修プロジェクトの違いや、建物群・建物・インテリアなどの違いがあるため、一口に認証取得といって総数を比較することはかなり乱暴かもしれません。。。

認証システムを広げるための戦略の違いが大きく違うことは面白いです。日本では官主導として、補助金や制度によって広めていこうとしこうとしています。一方、米国では、民主導として、広めていこうとしています。その一環として「環境性能が高い建物では労働生産性が高い」といった研究やデータ収集を積極的に行っているようですが、今後適宜、調べていきたいと考えています。

地方公共団体の後押しにより、また外資系企業の日本進出に伴って、日本マーケットにおけるCASBEEやLEED取得建物件数は今後も増加するでしょう。この差が縮まるのか開くのかは分かりませんが、いずれにしても環境性能に対する認知度が上がることは良いことですね。