現在、公益財団法人アイメイト協会飼育奉仕として、ラブラドール・レトリバーを室内で飼っています。生後2か月で子犬を引き取り、1年間お預かりしたあと協会にお返しします。お返しした後の犬は、協会にて4か月ほど訓練を受けた後、試験に合格した場合にのみ盲導犬として活躍するようになります。育てた1歳の子犬をお返しするのはちょっと辛いですが、重要な任務を担う犬の「人生ならぬ犬生」に携わることができて、良いのだと思っています。

実は先日もアイメイト協会からの依頼で、TV朝日の番組「100時間後に事件が起こります:100時間後にわずか1歳の子犬と離れ離れになる家族」に出演することになりました。

コロナ禍の影響で、ほとんど自撮りになりましたが。。。

番組制作クルーとの3密を避けた打合せ

もともと10年前に家を設計した時は、犬を飼うことを想定して間取りを計画していませんでした。もし犬との生活を想定できたのならば、ケージやトイレの場所を検討し、犬が入ってこないキッチンを計画するなど、いろいろと工夫ができたと思っています。

キッチンに犬が入ってこないように段ボールで仕切りをしています。応急処置がそのまま常態化したものですが、もともと犬を飼うことを想定していたら、犬用フェンスを設置するなど、もう少しマシな方法がありました。。。

日本では、少子高齢化の一方で、ペットの飼育頭数は増加傾向で推移しています。散歩の要らない猫は増加傾向である一方で、犬はやや減少しているようです。それでもなお、約715万世帯が犬を、約552万世帯が猫を飼育しています(一般社団法人ペットフード協会2019年全国犬猫飼育実態調査より)。

犬と猫の飼育頭数の推移(一般社団法人ペットフード協会2019年全国犬猫飼育実態調査より)

一般社団法人ペットフード協会2016年のデータによると、8割以上の人が犬を室内で飼育するようになったそうです。犬を外で番犬として飼うのではなく、室内で家族とともに生活することを前提に飼うにあたり、家づくりをどのようにすべきか様々な方面から検討可能です。大型犬と小型犬でも異なるでしょうし、人と犬の距離感(例えば、夜犬はハウスの中で寝るか、人と一緒に寝るか)も飼い主の方針で大きく異なるでしょう。

犬の一日の生活を考えると大きく分けて、

  1. 寝る場所(ハウス)
  2. 食事する場所(ダイニング)
  3. 排泄する場所(トイレ)
  4. 体を洗う場所(シャワー)

の4つが機能を持った空間が必要となります。

これらの空間を、例えば犬のシャワーは人間の浴室エリアを使い、犬のために特別にしつらえない場合もあるでしょう。また、ダイニングエリアとトイレエリアを一体化させるなどとして、これらの空間は組み合わされる場合もあるでしょう。今回のブログでは、犬とともに暮らす家を計画するにあたり、ハウス、ダイニング、トイレ、シャワーをどのようにしつらえることができるか、Instagramを中心に海外・国内事例をリサーチしてみました。

1. 寝る場所(ハウス)について

リビングエリアのソファの隣にケージを置いています。床に敷いたコルクマットはかじられ、ソファーカバー(シーツ)は穴だらけです。

寝るときまたは留守番する時、犬はどのような状態でしょうか。以前実家で飼っていた犬(コーギー)は、かなり自由に屋内を動き回っていました。寝る時も、両親のベッドで一緒に寝ていました。現在飼っている犬は、留守番と就寝時はケージの中にいます。素直に中に入りますが、お留守番させられて機嫌が悪い時はクッションを食いちぎったりします。。。

食いちぎられたクッション

犬を飼った経験のある人は一度は経験しているはず。。。

叱られた後はつい目をそらす。。。

犬の居場所であるハウスは、1.後から製品を置く場合、2.家具に組み込む場合、3.建築物に組み込む場合 の3パタンがあるでしょう。

1.後から製品を置く場合

世の中には、様々な製品が売り出されています。一番小さいのはペットキャリアでしょう。予防注射など外に連れ出すときもそのまま持ち運びできます。ちなみに持ち手がついているのがキャリア、持ち手がないのがクレートだそうです(Pet Carrier, Dog CrateともにWikipediaより)

https://en.wikipedia.org/wiki/Dog_crate

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より大きい製品として、ケージやサークルがあります。我が家ではケージを使っているのですが、一番一般的なのではないでしょうか。下にクッションやすのこを敷くことがありますが、破壊されないように注意が必要です。。。

 

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ケージ(Cage)はもともと英語ですが、鳥籠、おり、刑務所、監獄といった意味があります。あまり良い印象はないですね。その点、透明な素材で囲いを作る事例もあるようです。おりのイメージは減りますが、透明な素材(アクリル板?)が傷つきそうですね。

 

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「小屋」であることをイメージした室内用の犬小屋もありました。

 

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犬小屋にはいろいろとタイプがあるようです。テントみたいなタイプもあるようです。犬も人形のようですね。

 

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置き家具の一部として、犬小屋を組み込むことも可能です。この事例では、ベンチの一部に犬小屋が組み込まれています。

 

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現在の室内に置くことができ、移動も簡単なので、こうした製品で犬のハウスとすることが一般的でしょう。ただこれらの製品をインテリアの一部として考えた時、かならずしも空間になじんでいるかと考えると、疑問が残ります。

2.造作家具に組み込む場合

購入した製品をそのまま置くのでは、ちょっと物足りない人は、造作家具として犬のハウスを作ります。カウンター下に組み込むことによって、ハウスと家具が一体化します。造作家具として作り込むことによって、中型/大型犬でも対応可能です。お互いの空間は壁で仕切られていて、上部も天板で閉じられているので、犬にとって落ち着くことのできる空間になっているのではないでしょうか。

 

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3.建築に組み込む場合

海外の事例では、階段下の空間を犬用のスペース(ドッグスペース)として活用しているものが多くありました。デッドスペースになりそうな天井高の低い空間を有効に活用しています。

 

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スキップフロアを積極的に利用することにより、犬のための空間を作ることができます。ちなみに建築基準法には、小屋裏物置等の天井の高さが1.4m以下の場合は、階数及び床面積には算入しないとする決まりがあります(ただし広さに限度あり)。このような空間は、物置としても犬のための空間としても使うことができます。

 

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以下は、もともと子供のための「秘密基地」や、収納として作られた空間であっても、犬のための空間としても成立しますね。

 

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天井高さの低い空間ばかりでなく、幅の狭い空間を、犬のための空間として活用することも可能です。人にとっては狭い空間でも、犬にとっては十分でしょう。

 

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2) 食事する場所(ダイニング)


我が家では、ダイニングのための特別な空間はありません。キッチンカウンターのすぐ脇の床に餌用と水用の皿を置き、適宜取り換えているだけです。

この事例では、ちょっとした空間の一角を餌場としてしつらえています。

 

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以下の事例では、キャビネットに餌場を組み込んでいます。インテリアとして一体感は出ますが、広い空間でないとなかなか実現しないアイデアですね。

 

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どのアイデアもキッチンのそばに餌場が設置されています。ドライフードを収納したり、水を補給したり、ボウルを洗ったりことを考えると、キッチンエリアの近くに設置することが良さそうです。

3) 排泄する場所(トイレ)

トイレをどのようにするかは本当に難しいです。特にオスはおしっこの飛沫が飛び散るので、ある程度の大きさが必要になります。同時に、人目につくリビングやダイニングにトイレをしつらえても、決して見た目が良いものではありません。また、匂いやふんの処理の問題もありますから、家の中でどこに設置するかは悩ましいところです。

我が家では、洗濯機や食材庫のあるユーティリティスペースの中に、塩ビシートを敷いた上でトイレトレイを置いています。食器庫の扉が開くように、また犬の動き方を観察した結果、トレイは斜めに設置されています。リビング・ダイニングにトイレを置かなくて良かったため、ユーティリティスペースを作っておいてよかったとつくづく思います。

場合によっては、ここまで大規模に給水シートを置く必要もあります。

 

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このようにちょっと隠れたしつらえだと、見た目にも良いですね。清掃用品がすぐ近くの棚に置いてあるのも使い勝手が良さそうです。

 

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縦格子で空間を仕切っています。奥に見えるのは排気用の通気孔でしょうか?

 

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これは、階段下の空きスペースにトイレをしつらえたようです。ハウスの事例でもありましたが、階段下の使い道はいろいろとありそうです。

 

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4) 体を洗う場所(シャワー)


我が家では、犬を洗うための特別な場所を設けていません。人が体を洗う場所で一緒に犬も洗います。体も小さいので、散歩の後は風呂場まで抱えて運びます。

海外の広い家では、ランドリースペースと兼ねて犬用シャワーも設置している事例が多々ありました。どの事例も、飼い主が犬を洗いやすいように、低い立ち上がりやガラスの開き戸がついています。

 

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犬とは直接関係ありませんが、洗濯機などのアプライアンスがカッコいいですね。日本の洗濯機も、機能を複雑にしなくても良いので、もう少し機能やデザインがシンプルになってほしいものです。

シャワーの隣には犬の空間(ハウス)も併設されている事例もあります。

 

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玄関わきに犬用のシャワーブースを設置している事例がありました。玄関で靴を脱ぐ習慣のある日本では、玄関わきにシャワーブースがあっても良いかもしれません。(外+玄関+洗面+更衣エリア)と(リビング+ダイニング+キッチン+寝室)を隔離し、玄関わきにシャワーブースや洗面所を配置することは、ウイルスや細菌、さらに花粉などを室内に持ち込まないためには重要な設備機器です(くしゃみ・鼻水・鼻づまりから身を守る「花粉に強い家」の2つの考え方 参照)。家づくりの際、検討の価値はあるかもしれません。

 

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まとめ
家族の一員としての大切な飼い犬ですから、子供部屋を考えるのと同じように、犬のための空間を考えても良いのではないかと思い調べてみました。

インスタグラムでは、海外の多くの事例を確認することができました。特に、ハウスやシャワーについては、機能的で見た目も良い事例が多かったと思います。
環境が異なる日本の住宅にはなかなか適用するのが難しい事例も多いですが、何かの参考になるのではないでしょうか。

アイメイトの連載コラム「アイコがレポート! アイメイト協会を支えるボランティア家庭」に掲載されました。よろしければご覧ください。