【2018年6月18日 追記しました】

最近地震が続いています。17(土)に群馬県南部(渋川市)で震度5弱、そして今朝8には大阪府で震度6を記録する地震が発生しています。

地震情報(各地の震度に関する情報)気象庁ウェブサイトより

今後余震が発生する可能性もあります。より細かく地震の発生状態を示す気象庁のサイトでは、さらに多くの地震が発生していることがわかります。

2018年2月6日に台湾の花蓮地方で発生した地震では、倒壊したビルの映像が繰り返し流れていました。花蓮地震ではM6.7(最大震度7)でしたが、建物が倒壊してしまう威力を持つわけです。

花蓮地方の地震 Wikipediaより

いくら地震多発国として慣れているつもりでいても、やはり気になるのが安全についてです。とりわけ建物の安全性について、あらためて考えをめぐらされた方も多いのではないでしょうか。ビルの安全性については、やはり倒壊が気になります。どのようにしたら「地震に強い住宅」として安心な住環境を実現できるのでしょうか?

なぜ地震によって建物が倒壊するのか

ではそもそも、なぜ地震によって建物が崩壊するのでしょうか。おさらいしてみましょう。

TEDEdでわかりやすい動画をみつけました。何が建物を崩すのか。どのような建物が「揺れ」に強いのか、生き残る(建て残る?)建物とはどういうものなのか、が短い時間でよくわかるようにできています。ナレーションは英語ですが、ビルの看板や説明が日本語になっているのは製作者のこだわりでしょうか。日本語字幕のある4分51秒の短い動画なので、是非見てみてください。Why do buildings fall in earthquakes?(TEDEd YouTubeより)

動画では、人口増加によって都市開発が進み、ビルが多く建てられていくうちに、地震そのものの脅威というよりは、地震によって引き起こされる建物の崩壊が、生命を脅かす危険となったと説明しています。

そもそも、なぜ地震で建物がくずれるのでしょうか。メキシコシティーの地震では、6階~15階建という比較的低層のビルに被害が集中しました。高いから危険、低いから安全ということは一概には言えないのです。

高層ビル内で地震を経験された方も多くいらっしゃることでしょう。あのゆら~ん、ゆら~ん、というなんともいえない揺れ方は、ビルに伝わった振動を相殺するために吸収している動きなのです。

ではどのような建物が倒れないのか?
ここでいう「よく考えて設計されたビル」とは具体的には

土壌や土質、断層タイプ、過去の地震データなどをもとに計算を行いそれに適した耐震性能を備えたビル

ということになります。

「よく考えて設計された一般の住居・家屋」を入手するには

では、「よく考えて設計された一般の住居・家屋」を入手するにはどうすればよいのでしょうか。新築、既存戸建住宅、既存集合住宅、とそれぞれについて、どのように対応するかを基準に考えてみました。

新築の場合
地盤調査を行い、土壌や土質、地盤についてのデータを取得し、関連法規と照らし合わせながら適切な建物の設計範囲などについて検討・設計を進めることが前提となります。
そのためには構造設計者に調査・設計を依頼し、強度計算の結果を踏まえて設計の構造的な側面からの安全性を確認する必要があります。また意匠面だけでなく建物の安全性という構造面の観点からも細心の注意を払って適切に施工されているかどうかを確認する必要があります。(これを監理業務と呼びます)

既存戸建住宅の場合
新築同様、地盤のデータ収集を行い、構造設計家と共に土台や基礎、壁や天井裏、の状況を確認した上で、補強工事の必要性を判断します。特に1981年に施行された新耐震基準(新耐震)以前の建物は、現行法規による基準を満たしていない「既存不適格」である可能性が高いため、注意が必要です。

既存集合住宅の場合
契約前に、その建物が新耐震基準で建てられているのか、を確認するとよいでしょう。築年数が古い建物は、立地の割にお得感もありますが、安全を重視するのならば、新耐震基準マンションを選ぶ方が安心です。まずは管理会社に連絡を取り、新耐震施行より前か後かを確認すること、また、新耐震以前に竣工した物件であれば、何らかの対策が取られているか否かを確認する必要があります。
ここで注意すべきは、「新耐震以降に竣工しているため絶対安全だ」ということが無く、また、「新耐震以前に竣工しているから絶対危険だ」ということもありません。どうしても心配ならば、管理会社に問い合わせて図面を入手した上で、構造設計者に問い合わせてみることもできるでしょう。

耐震・免震・制震の違いを知ろう

「よく考えて設計された一般の住居・家屋」とはどのような建物なのでしょうか。地震に配慮した建築物の構造に対して、「耐震性能/制震性能/免震性能が高いから安全」とうたっている建物もありますが、この耐震・制震・免震の違い、ご存知でしょうか。

また、ちょっとややこしいのは「震」と「振」の読み方が同じであることです。例えば、「制震」も「制振」も「せいしん」と読みます。ある点における地震動は、工学的には振動現象として取り扱われる (Wikipediaより)ですから、ある程度近い意味で使っているのではないでしょうか。

マグニチュードという言葉を一度は耳にしたことがありますよね。このマグニチュードとは「地震が発するエネルギーの大きさを示す指標」です。この地震エネルギーに襲われることによって建物に損傷が与えられます。この地震エネルギーをどのように吸収するかの違いが、耐震・免震・制震に顕れるのですが、以下、それらの違いについて見ていきましょう。

耐震構造について
まず耐震構造についてみていきましょう。

耐震構造 (earthquake resistant construction)
地震に対して十分に抵抗しうるように設計、施工された構造物または建築物をさす。またはそのようにする方法、しくみ。
(建築学用語辞典,第2版,日本建築学会編,岩波新書)

耐震構造は、一般的に地震力に対して構造体(柱・梁・筋交いなど)で耐える構法を指しますが、力ずくで地震力に対して抵抗するだけではありません。耐震構造では、主要構造材の強度とともに、変形性能により地震力に対して抵抗します。構造体が大きな変形力(粘り強さ・靭性)を有すれば、変形しながら力を逃がしていくことができます。もうすこし単純に言うと「構造部材の強度と粘りにより揺れに耐える」わけです。

このような耐震を目指して改修する場合、もともとの構造形式によって異なります。例えば、木造の場合、基礎の補強、壁の補強、壁量の増加によって、より耐震性能の高い建物に改修することができます。

政府広報オンライン 住宅・建築物の耐震化のススメより

木造住宅ではなくマンションの場合、耐震壁の増設、ブレース(筋交い)や外付けフレームの新設、柱や梁の補強によって、耐震改修(補強)することができます。マンションの場合問題となるのは、集合住宅である以上、自分のユニットだけ耐震補強しても、建物全体としての性能が必ずしも上がらないということです。物理的な耐震改修より先に、マンション居住者全体の合意形成が必要となりますが、大変そうですね。。。

政府広報オンライン 住宅・建築物の耐震化のススメより

免震構造について
次に免震構造についてみていきましょう。下の写真は免震装置です。こうした免震装置がフロア一面に分散配置されることによって免震の機能をはたします。この黒い被覆外皮の中には、ゴムと鋼鈑が交互に積層されているそうですが、あいにく中身までは見たことがありません。。。

免震構造 (seismically isolated structure)
免震を目的とした構造。現在実用化されているのは受動型であるが、アクチュエーターを用いた能動型免震構造も開発されている。

免震 (base isolation)
建物の基礎部分などに積層ゴム、あるいは滑り支承などを入れて地震による揺れの強さを抑えること。
(建築学用語辞典,第2版,日本建築学会編,岩波新書)

免震構造では、免震層における積層ゴムや滑り支承などのアイソレーターとダンバーによるエネルギー吸収により、主要構造体の損傷を防いでいます。言い換えると、免震装置で地面と建物を遮断して、揺れを免れているわけです。

様々な公共の建物で、免震の改修がされているようです。例えば、上野の国立西洋美術館(ル・コルビュジエの建築作品群の一つとして文化遺産に登録されている)では、地下の免震装置を見ることができます。立ち寄られる際には、美術品鑑賞とともに、免震装置鑑賞も是非。免震装置-国立西洋美術館に行ってみたも併せてご覧ください。

国土交通省ウェブサイト免震改修の事例より

 

制震構造について
最後に制震構造についてみていきましょう。

制震構造 (seismic-response controlled structure)
制振構造のうち、特に地震に対する揺れを抑えるメカニズムを組み込んだ構造。

制振 (vibration control, response control)
振動を自動的に感知し、それを低減させるために人為的に制御すること。受動型と能動型がある。
制振構造 (response controlled structure)
制振(振動制御)のメカニズムを取り入れた構造。風や地震による構造物の揺れを目標値以下に抑える目的で用いられる。受動型(パッシブ制振)と能動型(アクティブ制振)がある。
(建築学用語辞典,第2版,日本建築学会編,岩波新書)

国土交通省のホームページ制震構造の事例より

制震構造では、制震部材のエネルギー吸収によって、主要構造体の損傷を提言しています。全体的に制震部材を配置する場合や、建物の最上階に振り子状の制振装置を設置する場合もあります。こうした制震装置によって、特に高層建築物は揺れを低減させることができます。言い換えると、制震装置で地震エネルギーを吸収し、揺れを制御していると言えるでしょう。

オイルダンパについて

下の写真は油圧を利用したオイルダンパです。ゴムを積層した免震装置の隣に設置されているので、免震装置の一部なのだと思います。こうしたオイルダンパは免震ダンパまたは制震ダンパとして地震エネルギーを熱エネルギーへと変換します。粘弾性ゴム、油圧、摩擦などさまざまな方式のダンパーがあるようです。機能的にはおそらくマウンテンバイクのサスペンションのようなものでしょう。この鋼製管の中身は一体どうなっているのでしょうか?ぜひ知りたいものです。

まとめ
今まで、耐震・制震・免震について簡単に見てきました。まとめてみると

耐震:構造部材の強度と粘りによって、揺れに耐えること
免震:免震装置で地震による振動を遮断し、揺れを免れること
制震:制振装置で地震エネルギーを吸収し、揺れを制すること

といえるでしょう。

先に示したTedEdでは「つまり倒れないのは一番頑丈な建物ではなく、よく考えて設計されたビルなのです」という結論でした。建築コストも無尽蔵にあるわけではないので、耐震・免震・制震をバランスよく採用することが重要だと言えるでしょう。

最後に、これらの耐震・制震・免震に配慮した建物であったとしても、耐震性に「絶対安全」はありません。建築基準法に記載されている地震に関する基準は、震災があるごとに厳格化されていますが、あくまでも守らなければいけない最低基準でしかありません。地震は自然現象ですので、いつ200年に一度の地震が起こるか分かりません。本日朝発生した大阪を震源とする地震でも「阪神大震災を思い出した」というコメントが数多く寄せられていたようです。地震は忘れたころに発生します。基準法に定められた範囲を大きく超える大地震が起こことも十分考えて備えておく必要があります。

住宅には様々な構法があります。「地震に強い家」建て直しの時は考えたい_軸組構法と2×4構法ではどちらが地震に強いか調べてみた についても併せてご覧ください。