「医師」に診察してもらう経験は人生で何度かはあるでしょう。まずはどこかの病院に行ってみて、どうも相性の合わない「医師」であれば、次回から別の病院に行くことも可能です。経験を重ねて、自分の病気をどの「医師」に委ねるか決めることが可能です。

しかし人生で「設計事務所/建築家」に何度も設計を依頼することはまれでしょう。「家を建ててみたけど気に入らないから別の家を建てよう」という訳にはなかなかいきません。一度建てたら毎日住まうことになる家ですが、どのようにして自分の望む家を手に入れることができるのでしょうか?

このブログを書くに至った理由

1. 施主と「設計事務所/建築家」のミスマッチを避ける

建築設計事務所を開設して15年以上になります。おかげさまで多くの方々から設計監理のご依頼をいただきましたが、せっかくお声がけいただいたもののミスマッチのために設計契約に至らなかった事例もいくつかありました。同時に、別の「設計事務所/建築家」や工務店と家づくりを進めていたもののトラブルになったために第三者として相談を受けた事例もありました。これらの事例は、施主があらかじめ家づくりに関する設計と施工のプロセスを、あらかじめより具体的に理解される機会があれば防げていたと考えます。

2. 建築家の職能が揺らいでいる

日本建築家協会(JIA)「近未来特別研究会」の委員として建築家の近未来について協議する機会に恵まれました。一般的に「建築家」と聞くと”自己中心的”で”近づきがたい””巨匠”といったイメージが先行し、あまり身近な存在ではないようです。一方で、家づくりを地道に行っている「建築家」は日本中に数多く存在していることを知ってもらいたいと強く思いました。

また世界的にみても、建築設計のみを行う職能としての「建築家」の在り方がこの10年で大きく揺らいでいます。”オーソドックス”な設計業務および監理業務の進め方を、一度まとめて整理しておきたかったこともあります。

3. 学生に知ってほしい

設計事務所に加え大学教員となって3年が経過しました。「卒業したら家の設計がしたい」と言う希望に満ちた学生が多数いるものの、大学の建築教育プログラムの中では必ずしも住宅に関する設計や施工の流れについて十分に説明できているとは限りません。

今後日本の人口が減少し住宅着工件数が減少する中「住宅の設計をするならハウスメーカーへ就職する」という短絡的な考えではなく、個別に設計解を導き出す「設計事務所/建築家」として建築の設計に関わる別のルートがあるということも知っておいてもらいたいのです。特に今後新築よりも修繕や改修が増加する中「設計事務所/建築家」による個別の設計解はさらに重視されていくでしょう。

4.「瑕疵」が「契約不適合」に置き換わる

2020年4月から改正民法が施行され「瑕疵」という言葉が「契約不適合」という言葉に置き換わることになります。米国に代表されるような契約社会に比べ、日本では信用信頼ベースで仕事が進み契約の重要性が低いと言われていますが、この日本でもいずれ契約の重要性が高まることにつながるでしょう。建設業界の慣行が急に変わるわけではありませんが、今後徐々に「どのような業務に対して」「どのような契約」がなされているのか、より注意深く理解する必要があります。

「建築家」という呼称について

「建築家」は呼称であり国家資格ではありません。詳しくは後述しますが「建築士」の資格を取得し「設計事務所」にて設計の業務のみを行う人が「建築家」と名乗る場合が多いです。ここでは「建築家」よりも「設計事務所」の呼び名の方を優先して使いつつも「設計者」個人について言及する場合は「建築家」を使うことにします(ちょっとややこしいですが)。

ちなみに「建築家」という言葉を多くの人が用いますが、「建築家」の業務が多様化している現在、また「建築士」の施工者も存在するため、私自身は自分のことを「設計者」と呼ぶほうが座りが良いとも思っています。

それでは以下、家を「設計事務所/建築家」に依頼して建てるまでの流れについて、段階を追って説明したいと思います。家づくりのプロセスについてのブログですので、ハウスメーカーや工務店に依頼することを決めている方にも参考になると思います。長文なので、ぜひ必要なところから読み始めてください。

なお目次に記載してある期間はあくまでも参考値であり、場合によって大きく異なる のでご注意を!

  1. 条件の整理(数か月~数年)
  2. 設計契約(1か月)
  3. 基本設計(3か月)
  4. 実施設計(3か月)
  5. 施工者の選定(1か月)
  6. 施工(6か月)
  7. 維持管理(数十年~)
  8. まとめ

1. 条件の整理(数か月~数年)

持ち家 それとも 賃貸?

そもそも持ち家は必要なのでしょうか?賃貸ではいけないのでしょうか?まずは2018年(平成30年)の国勢調査の結果を見てみましょう。

持ち家数、借家数及び持ち家住宅率の推移―全国(1973年~2018年) 平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要より

この統計によると、持ち家住宅率は61.2%だそうです。これを多いと見るか少ないと見るか?全国的にみれば、まだまだ持ち家志向は続いているといえるでしょう。

一方で、人口が集中する東京では持ち家の状況も大きく異なります。東京都の持ち家住宅率は45.0%(平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 都道府県別の主な指標より)であり、賃貸(借家)の方が上回っているのです。

持ち家と言っても、一戸建ての住宅もあれば、マンションやアパートと呼ばれる共同住宅もあります。東京都ではどのような状況なのでしょうか?

東京都の統計 平成30年住宅・土地統計調査 住宅の建て方別居住世帯のある住宅数より筆者作成

2018年の統計では「共同住宅」は居住世帯のある住宅の71.1% と高い割合を占めている一方で、「一戸建」は26.8%となっています。ちなみに昭和53年(1978年)では「共同住宅」が55.0%であったのに対して、「一戸建」が38.8%ですから、この40年で共同住宅化が大きく進んでいると言えます。

一戸建てを希望する場合、工務店やハウスメーカーなどさまざまな選択肢がありますが、設計事務所に相談するのも一つの選択肢です。

縁あってこのブログを読んでいただいている方は、「持ち家でかつ戸建て住宅を希望されている方」という、ごく少数派であることが良く分かりますね。東京都を対象とした場合、45%×26.8%=12.1%というごく限られた方が対象になります。。。

設計事務所 それとも 工務店 それとも ハウスメーカー?

戸建て住宅の新築や大規模な改修工事を検討しはじめたとき、最初にすることは何でしょう?駅までの道のりにある近所の工務店に相談するかもしれません。あるいはテレビコマーシャルで良くみかけるハウスメーカーに連絡するかもしれません。最近新築した友人に話を聞いて情報収集するかもしれません。

工務店とは、一般的には、数名から数十名くらいからなる設計と施工を請負う会社です。いわゆる町の大工さんが所属されるのは、こうした工務店です。電気屋さん水道屋さんといった複数の下請け業者を束ねる施工管理者を中心に、設計者や事務系職員から成り立つ組織です。地元に根差して営業する場合が多いため、地元に代々住み続けている方の中には、親の代から同じ工務店とお付き合いされている方も多いかもしれません。なお、施工のみを請け負い設計事務所とともに家づくりに取り組んでくださる工務店もありますが、このブログでは設計と施工を請け負う一般的な工務店を指すものとします。

ハウスメーカーとは、工務店より大規模であり設計と施工の両方を請負う会社です。全国規模で展開する大企業の組織で、企業の傘下にあり、自社の工場やサプライチェーンを持ち、部材の大量仕入れ大量生産により効率化を図ります。建物の組立て方や施工の方法に特別な認定(型式認定など)を取得することによって、独自の仕様を確立しているハウスメーカーが多くあります。施工部門とともに、設計部門や事務系職員から成り立つ会社組織です。

2017-2018 住宅業界 売上高&シェアランキング

ハウスメーカーは、大量に資材を購買しているため、安く建材を手に入れることができることができるというスケールメリットがあることは皆さんもご存じかもしれません。また認定構法に基づいた各社独自の規格化を行い部材の大量生産をすることによってコストダウンを図ることができます。

一方で部位や部材が規格化されているということは、規格から外れた空間を望んだとたんに急にコストが跳ね上がることを意味しますし、場合によってはいくら増額しても希望を実現できないこともあります。例えばアルミサッシを既製サイズから大きいサイズとしたり木サッシに変更することや、天井の高さを部分的に上げたいといった希望など、具体例を挙げるときりがありません。さらにTVや各媒体への広告費や全国に散らばる従業員の人件費、オフィスや住宅展示場の賃料などといった固定費をまかなうために、多くのお金を費やされていることは忘れてはいけません。また、大会社の組織ですから、営業担当窓口が途中で配置換えすることもあります。と契約するのではなく会社組織と契約をしていると考えた方が良いでしょう。

それでは、工務店ハウスメーカーの共通点は何でしょうか?それは「設計も施工も単一の会社が一括して行う」ということです。建築業界では、これを「設計施工」または「設計施工一括」と呼びます。工務店ハウスメーカーの中にも建築士もいるのですが、設計と施工が一体の会社ですので施工を通じた自社の利益確保をまず優先したうえで、設計を進めることになります。

設計と施工を単一の会社が行う設計施工(設計施工一括または設計施工一貫)

一方で設計事務所のように「設計と施工を別々の会社が行う」という業態もあります。国家資格である「一級建築士」や「二級建築士」が「一級建築士事務所」や「二級建築士事務所」を開設し、設計業務だけを行います。このような場合には、「設計業務」は建築士事務所が行い、「施工業務」は工務店などの建設会社が行請け負うように、設計業務と施工業務が分離しています。建築業界では、このような状況で建築物を建てることを「設計施工分離」と呼びます。設計と施工が分離しているため、施工に対して独立の立場を保ち制約を受けない特徴があり、施主の利益を最優先することが可能です。

設計と施工を別々の会社が行う設計施工分離

設計事務所のドアをたたくことに躊躇する方は多いでしょう。「『先生』に相談するのは敷居が高い」「相性が合わなかったらどうする」「好き勝手に設計されてしまう」「建築費がかさむ」などなど心配されるのではないでしょうか。

ここで以下に設計事務所に業務を依頼することのメリットとデメリットを挙げてみます。(以前のブログ 設計と施工を一括で依頼するメリットとデメリットについて を加筆修正しています)

設計事務所に依頼することのメリットその1 監理業務

設計と施工が分かれているメリットは何でしょうか?施工者と異なる立場である設計事務所の重要な役割として「監理業務」があります。建築士として専門の技術を有する者が、施工者とは独立した立場で、消費者である施主側に立つ代理として専門的知識を持ちつつ施工をチェックするのです。監理業務は、手抜き工事をチェックし欠陥住宅を防ぐことにつながります。具体的な「監理業務」については後述します。

設計事務所に依頼することのメリットその2 詳細な設計図書

左)ハウスメーカーの設計図書(実物) 右)設計事務所(当社)の設計図書

上の写真の左側はハウスメーカーから渡された確認済証と数枚の図面からなる書類ですが、右側は、意匠・構造・設備に関する100枚以上の図面からなる実施設計図書です。出来上がるのは木造2階建ての同じような床面積でありながら図面の情報量の違いは歴然としています。設計事務所の場合は詳細な設計図書を作成しますが、ハウスメーカーや工務店の場合は間取り程度の図面とおおよその仕様で設計図書が作成されて契約に至る場合があります。

そもそも契約図書に建材や部位部材詳細の仕様に関する情報が含まれていないということは「設計図書の通りに施工する」という義務を表す契約が存在していないことを表します。性悪説でとらえれば、工務店やハウスメーカーが利潤を第一に確保した上で、建材や仕様を決めてしまうということです。特に一般的に施主の方が施工者よりも建築に関する知識が乏しい分、どのように仕様が落とされたのか分からないことも多いと思います。

当然ながら、図面にあらわされていないこと、つまり契約に含まれていないものを要求すれば、増額の請求が来て結局割高になります。今までハウスメーカーや工務店と契約してしまったものの納得がいかないことが多く不安がつのった施主から、知人経由で相談を受けたことがしばしばありますが、ほとんどはこの設計図書の不備による増額への不信感が原因と考えています。この場合、契約(設計図書)にないことは即増額につながると肝に銘じたほうが良いでしょう。

詳細な設計図書のメリットは竣工後も続きます。竣工後、数十年維持管理をしながら住み続けることになります。その中で詳細な設計図書が存在せず構造や設備の状況が分からないと、どのように修繕や増改築を進めればよいのか、適切な計画を立てることができません。せっかく長持ちする家、子孫に引き継げる家を建てたはずなのに、結局「壁の中を壊してみないと良く分からない」といった状況が発生します。

設計事務所に依頼することのメリットその3 相見積もり

A社、B社、C社 の相見積もり

「相見積り」とは、設計がある程度終わった段階で、複数の厳選された施工者から見積りをとり、価格が最も安く施工能力の高い施工者を選定することです。この相見積もりに参加をお願いする施工者は、以前住宅の施工を依頼した施工者かもしれませんし、同業の設計事務所から紹介された施工者かもしれません。雑誌の作品紹介を通じて探す場合もありますし、施主から紹介される場合もあるなどさまざまです。この段階では、価格の比較のみに終始するのではなく、現場監督さんの熱意・経験・プロジェクトにさける時間や、設備などの関連会社との協力状況なども含めて、あらゆる観点から総合的に判断する必要があります。その判断を下すときにも、設計事務所は施主の傍らにいて説明・助言を行います。

設計が詳細になればなるほど、住宅建設にかかるコストは具体的かつ詳細になります。見積りを施工者に依頼する際、可能な限り「XX一式」といった表示を排除し「材料費」と「施工費」の内訳を明示してもらうようにします。施工に係るコストを「坪単価XX円」や「XX一式」といったざっくりとした不透明な算定ではなく、各部材ごとに数量を計算し単価を掛けることによる透明な算定によって詳細に見積ることができるようになることは大きなメリットです。

このように詳細な見積がある場合、先にのべたような設計変更にも適切に対応することができるようになります。例えば、あるタイルをAから後から見つけたより好みのBへと変更した場合、施工面積が変わらなければ、単価を変更するだけでその増減を算定することができます。具体的な金額の増減が分かるので、変更するかどうかの判断がつけやすいと言えるでしょう。ただし施工中にこのような変更を行う場合は、既に実物を発注している場合や、変更するための手間が発生するので、必ずしも単純な増減になるわけではないことに注意が必要です。

設計事務所に依頼することのメリットその4 自由度の高い個別の設計案

ライフスタイルが多様化する現在、人は自分の暮らし方に対して様々な異なる要望を持っています。お勤めの夫+専業主婦+子供2名で3LDK といった、高度成長期を引きずった画一的な考え方では、必ずしも理想のライフスタイルを実現できないかもしれません。例えば、土地形状が変形地や狭小地で建築条件が厳しい場合や、特殊な生活スタイルや趣味をお持ちの施主の場合、個別に最適解を探ることが可能な設計事務所だからこそ、様々な提案を出してもらえるでしょう。設計事務所に依頼した場合「当社の仕様ではできません」といったおことわりを受けることはなく、逆に「実現するためにはどうすれば良いか」を考えることに意欲的です。

よく設計事務所は「デザイン重視」と言われていますが、半分正解で半分間違っていると思います。設計事務所に依頼すればどれも「デザインが重視された」住宅になる訳ではありません。「デザイン」の良し悪しはデザインする設計事務所を主宰する建築家とその提案を判断する施主に拠ります。設計事務所に依頼するメリットは、あくまでも施主のライフスタイルや考え方を汲み取った自分にフィットする「設計案」を作成してくれる 点に重きを置いた方が良いと思います。

設計事務所に依頼することのデメリットその1 設計に時間がかかる

一方、設計と施工を分けることのデメリットは何でしょうか。設計に時間がかかることです。とくに基本設計の段階であれば、施主が納得するまで設計は続きます。後述しますが、打ち合わせを通じて施主の要望を聞き出し具現化することには、大変時間がかかるものです。実施設計の段階ではさらに詳細な設計図書を作成するわけですから、時間がかかることは避けられません。

大量生産の自動車(またはハウスメーカーの住宅?)を購入するように、あらかじめほぼ完成された基本タイプを選定した上で、限られたオプションを選択するように製品を選定するのとは、プロセスが全く異なります。

設計事務所に依頼することのデメリットその2 設計を始める前には施工費が確定しない

設計を始める前に施工費が確定しないことも、デメリットのとして挙げられるでしょう。「設計事務所」と「施工者」とを別々に契約する「設計施工分離」の場合、特に設計段階において施工者が決定していないため、おおよそのコストは算出できても正確な施工費を算定することができません。一方でハウスメーカーや工務店のように「設計部門」と「施工部門」が同じ会社に属している「設計施工」の場合、既に確定した予算を絶対的上限として建物を提供することが可能となります。製品としての自動車を購入する場合に近いと考えてよいでしょう。

設計事務所に依頼することのデメリットその3 決断を求められることが多くエネルギーを要する

家を設計するにあたり、施主は絶えず何らかの決断に迫られます。家を建てるか借りるかの決断から始まり、家づくりに関係する予算やスケジュールといった大きな決断から、素材や色といった細部の決断まで、多大な労力がかかります。自分自身の希望を明確にすることは、思っている以上に大変です。時には今までの生き方や暮らし方を見つめなおし、将来の生き方を想定することが必要になります。松竹梅のオプションの中から簡単に選択したい人や、そこまでの時間やこだわりが無い人は、選択肢がより限定されているハウスメーカーや工務店に依頼するほうが楽かもしれません。

設計事務所に依頼することのデメリットその4 責任が一本化しない

「設計」と「施工」を分離することは良いことばかりではありません。「設計」については、設計事務所と設計監理業務委託契約を、「施工」については、施工者と施工請負契約を締結する必要があります。また、何か問題が発生した時、設計に関する問題は設計事務所と、施工に関する問題は施工者と対峙することになります(施工者に関する問題は、施主サイドに立って施主の利益を代弁するる設計事務所が交渉にあたることになります)。

ハウスメーカーや工務店は「設計部門」と「施工部門」が同じ会社に属している「設計施工」であり、契約が一本ですので、このような問題は発生しません。

いつ決断するか

人生のどのフェーズで家を建てようと決断するかはとても複雑な選択です。例えば20代30代で家を建てようと決断する場合、子供の有無が決まっていないかもしれません。通勤に便利な土地を選んだ後で、転勤や転職をする可能性もあるでしょう。

40代50代では、子供の独立や親の介護に関わる生活も視野に入れて検討することになるでしょう。

60代70代では、自分ができるだけ長い間自活して住み続けるように計画する必要があります。車いす対応の広い廊下や浴室をしつらえたり、家の至る所に手すりを設置できるようにしたりしておく必要があります。ホームエレベータの設置も視野に入るかもしれません。

このように人生いつのフェーズで家を建てる決断をするかによって、配慮する内容が大きく異なります。

いったん家の新築や大規模改修する決断をしたら、さらに具体的に住民票を移して引っ越しすることができる竣工予定日を決定しなくてはなりません。子供の就学や勤務の都合で、年度末までに竣工し引っ越す必要があったり、住宅や相続に関する税金の控除を受ける場合、その最終期限が竣工予定日として設定される場合もあります。そして今まで居住していた住宅の売買が関係する場合は、仮住まいの手配や荷物の仮置きなど、さらに状況が複雑になります。

どこに家を建てるか

資金を準備し家を建てる決断をしたとして、どこに家を建てたらよいのでしょうか。自分の通勤や子供の通学や学区を考慮した場合、どこに住んだらよいのでしょうか?日常生活が車優先か公共交通機関優先かによっても変わるかもしれません。海や川のそばとか、公園のそばといった、自然環境によるものかもしれません。自分や家族にとって何を優先させるべきか順位を明確にするのはとても大変です。

一方、先祖代々の土地や親族と同じ敷地、あるいは生まれ育った土地に新たに家を新築することもあるでしょう。もし相続した土地に建設することができるのならば、土地代の資金繰りがその分楽になります。

誰が住むのか

家を新築したりや大規模改修したりする場合、現在いる家族のみが住むとは限りません。どちらかの親とともに二世帯住宅として住む可能性もありますし、老後に自分の子供と住むことになるかもしれません。その場合お互いのプライバシー確保のためどのようなしつらえにしておく必要があるのでしょうか。キッチンやバストイレが共用だと、お互いに気を使って長続きしないかもしれません。一方で全て別々だと一緒にすむことのメリットを享受できないことのあるかもしれません。生活時間帯やライフスタイルの違いを洗い出して、最適な組み合わせを作ることが大切です。

住人として想定しておくべきなのは血縁関係者ばかりではありません。容積に余裕があれば、賃貸住戸を併設して住宅を建設することも選択肢の一つです。そこまで本格的でなくても、民泊できるようにしつらえておくことも、建設予算に投資した資金を回収するためには重要かもしれません。ちなみに民泊は年間180日以上宿泊させることはできませんし、地域によってより厳しい条例が適用されている場合があるので注意してくださいね。

どのように予算を組みたてればよいのか

人生の各フェーズにおいて、今後どの程度稼ぐことが可能なのか、また出費がかさむ予定なのか想定して資金計画を立てることになります。これくらいまでは出せそうだという資金が明確になった時点で、プロジェクトに対するコストが確定します。

親族から遺産の生前贈与を受ける人もいるかもしれません。税金がかかるため税金控除に対する入念な計画が必要となります。これらの控除によって家を建てるための予算が徐々に確定していきます。

家を建てるには、本体工事費を準備すればよいだけではありません。付帯工事費や諸費用など、さまざまな項目にお金がかかります。改修の場合は状況によってそれぞれ異なるので、新築の場合を前提として「家づくりにかかるお金」を説明したいと思います。

 

本体工事費

建築工事:
構造躯体や仕上げに関する工事が含まれます

設備工事:
電気水道ガスに関係する工事が含まれます。ハウスメーカーや工務店では、空調機や照明が含まれておらず別料金となる場合もあるようですが、設計事務所の場合は統合的に設計を行うため、これらについても設備工事に含めることが一般的です。

付帯工事費

解体工事:
もともと古家が建っている場所に建築する場合には解体工事が必要です。特に建設リサイクル法では、床面積80平方メートル以上の建築物を解体する場合、分別解体が義務付けられ、解体工事費に反映されます。

造成工事:
傾斜地や崖地の場合、土留め(どどめ)のための擁壁(ようへき)を設置したり土地を平坦にしたりする造成工事が必要です。立地する行政庁によって、造成に対して特殊な条例があるので注意が必要です。

地盤改良費:
まず地盤調査を行うことは健全な基礎をつくり安全な躯体の建物を建設するために必須の条件となります。調査結果が芳しくない場合は、地盤改良を行ったり杭を用いたりすることが必要となります。

外構工事:
植栽やテラスなど、外構面積やこだわりによってコストが大きく左右します。樹木は年ごとに大きくなりますから、最初は小さめの苗を植えて出費を抑えることも可能です。後工事とする場合もあります。

家具什器備品:カーテンや家電など、現在使用中のものを持っていくのか、建設時の施工に含めるのか、新しく別途に購入するのか、それぞれの物品に対して決めなくてはなりません。契約に何が含まれて何が含まれていないのか線引きが重要です。

諸費用

設計監理業務委託料:
設計および監理業務に対してかかる費用(詳細は後述)。設計事務所に設計・監理の業務委託をするとかかります。ハウスメーカーや工務店でも、この費用を計上する場合が多いようです。

測量費用:
新しく土地を購入した場合は測量が既に行われているはずですが、親族から土地を譲り受けた時などには、必ずしも隣地境界を確定した正確な測量図が存在しないこともあります。設計に先立っての測量図を準備することは、発注者である施主の責任となります。

施工契約時の印紙税:契約書に印紙を貼ることが必要となります。1千万円を超え5千万円以下のものについては2万円(軽減税率1万円あり)、5千万円を超え1億円以下のものについては6万円(軽減税率3万円あり)がかかります。郵便局で購入可能です。

不動産取得税:
土地を購入したり新しく建物を建てたりすると、不動産取得税がかかります。実際の売買および取引価格より何割か低い固定資産税評価額の4%が土地と建物にかかります。今現在軽減措置もあるようですので、お住いの地域の税務署であらかじめ相談されることをお勧めします。

引越し費用:
年度末などの繁忙期における引っ越し費用は馬鹿になりません。長年住んだ家の場合、断捨離に予想外の時間や労力がかかるので、余裕をもって設計及び施工のスケジュールを立てておきたいものです。

新しい家に期待するもの

そもそも何のために家を新築したり改修したりするのでしょうか。「こういう家がほしい」という何らかの願いやこだわりがあるから、家を建てるのです。しかしそのこだわりポイントは人それぞれです。自然素材、温熱環境、といった家全体の方針にかかわることから、厨房設備、浴室、照明器具といった細かい部位まで多岐にわたります。

大切な趣味のための空間を実現したい人もいるでしょう。楽器を演奏をしたい、好きなクルマを眺めながら暮らしたい、クラフトをするアトリエが欲しい、犬や猫と暮らしたい、お菓子教室を開きたいなどなど、様々なこだわりのポイントを持つ方々がいらっしゃいます。

こうしたこだわりは、できる限り早い段階でくわしく設計事務所に伝える必要があります。例えばグランドピアノを置くのであれば、構造躯体に対してそれなりの耐荷重を想定しておく必要がありますし、防音に配慮する必要もあるでしょう。お教室を開くのであれば、外部の人が立ち寄りやすいしつらえにしておく必要があります。ペットとの生活であれば、トイレや水場をどこに置くかはあらかじめ想定しておいた方が良いでしょう。

さまざまな要求条件および資金や時間的な制約条件を、できる限り早い段階で明確にしておくことが、適切に設計を進めることに役立ちます。もちろん、これらの要求条件や制約条件が、設計をすすめることによって、より明確になったり変更されたりすることもあるでしょう。しかしながら、施主として常に「何が欲しいのか」という条件を明確にしておくことが、家を建てるという長く厳しいプロジェクトを成功させる大切なポイントです。

2. 設計契約(1か月)

どのように設計事務所を選ぶか?

雑誌・書籍やインターネット上に、多くの設計事務所が取り上げられています。ツイッターやブログで最近竣工した作品やよもやま話についてつぶやいている建築家も多くいます。気に入った作品を作っている設計事務所や、設計の背後にある考え方に賛同する建築家が見つかったら、まず連絡はしてみましょう。

ここで注意が必要なのは、雑誌・書籍やインターネットは、どれも視覚優位の写真情報のみ伝えていることです。建物は3次元の空間であり写真情報とは異なるため、本当は実際に建設された建物を見る機会があることが望ましいです。人間でも、例えば写真映りはとてもカッコ良かったり可愛かったりしても、実際会ってみるとそれほどでもなかったりしますね。。。雑誌・書籍やインターネットで使われている建物の写真イメージも同じで、レンズの角度や照明の効果も大きく、最後はフォトショップで調整しているものも多いので要注意です。雑誌に掲載された写真では真っ白に美しく見える家も、実際に行ってみると汚れて残念な状態になっている場合も多々あります。自分の目で確かめましょう。

初めて設計事務所に訪れる時には、できる限り自分の希望を明確にしていきましょう。新しい家に対して、何を最も重視しているのでしょうか?言葉で伝える内容かもしれませんし、イメージ写真で伝える内容かもしれません。スケジュールやコストについての希望をできる限りはっきり伝えると、お互いに誤解無く進めることができます。

建築家と聞くと、「エゴが強くて自分の希望を聞いてくれないのではないか」とか「好き勝手されてしまうのではないか」といった懸念を抱いている方も多いと聞いたことがあります。業務への取り組み方は設計事務所/建築家によって様々ですが、私にとっては、明確に言語化されている施主の希望を聞き入れ、潜在的な施主の希望を引き出して、整理すること が重要な役割です。建築家は、ことばを通じて形にならないものを形にします。そのため、今後設計を進めるにあたり意思疎通を行い対話ができるパートナーになりうるかどうかは、とても重要です。逆に、誠意ある建築家であれば、施主の要望が自分の得意とする範囲から逸脱している場合、つまり建築家自身が施主にとって適切なパートナーになりえないと判断した場合、別の専門家をお勧めすることもあるでしょう。組み合わせの問題ですから、がっかりしすぎずに気持ちを切り替えて次の設計事務所を探しましょう。

プロポーザル案の作成依頼

3案の異なるプロポーザル案(実例)

一度会ったくらいでは、本当に設計監理業務を任せて良いかどうか判断がまだつかないと思います。次のステップに進むためには、要求条件や制約条件を提示し、プロポーザル案を作成してもらうように頼んでみましょう。その際はいくばくかのプロポーザル費を支払うことは必須です。設計事務所は設計業務で利益を得るビジネスモデルであり、ハウスメーカーや工務店のように施工で稼ぐビジネスモデルではありません。設計案には、その設計事務所/建築家が長年の経験を費やしてきたノウハウが詰まっています。無償でプロポーザル案を提出する建築家がいたら、逆に怪しいと思った方が良いでしょう。

プロポーザル案は、依頼した設計事務所/建築家の家に対する価値観・美意識・哲学などを示す指標です。プロポーザル案の作成依頼をすることは、単に案を確認する機会としてではなく、パートナーとして共にプロジェクトを進めて行くことができる相手かどうかを見定めるための機会として考えることが適切でしょう。設計に関する業務委託はまだ始まっていないのですから。

プロポーザルを通じて、設計事務所の考え方や設計方針に賛同できた場合、設計契約へと進んでいきますが、もし少しでも違和感がある場合は、ちゅうちょなく質問し答えてもらうようにします。それでも納得いかない場合は、別の建築家に相談するほうが良いでしょう。設計に関する考え方は、建築家によってそれぞれ異なるため、A社がだめでもB社ならうまくいったということはよくあることです。人と人との関係ですから、相性の合う合わないは良くある話です。

その際お断りを入れた設計事務所のプロポーザル案を、他に転用するのは厳禁です。プロポーザル案を工務店に提示してその案通りに建てられてしまったという事例について聞いたことがあります(幸い私は経験していません)。いずれにしてもプロポーザルレベルの設計情報では、検討期間も短く設計詳細が含まれていないので、必ずしも適切な建物になる保証はありませんので気を付けましょう。ようやくパートナーとして適切と思える設計事務所が見つかったら、設計監理契約へと進みます。

プロジェクトの流れ

設計事務所に委託する業務は、ざっくり言うと「基本設計業務」と「実施設計業務」からなる設計段階の業務と、「工事監理業務」からなる施工段階の業務の二つから構成されます。今回のブログでは触れませんが、戸建て住宅よりも大規模や複雑なプロジェクトの場合、そもそもプロジェクトを行うのか否か判断する調査を行ったり、どのようなプロジェクトが適切なのかを企画を行ったりする設計の前段階の業務を「調査・企画業務」として契約に加える場合もあります。

工事監理業務とは?

「設計業務」については、皆さんもなんとなく想像がつくかもしれません。しかし、「監理業務」については初耳の方も多いのではないでしょうか。建築関係者の中では、「工事監理業務」と「工事管理業務」を区別するために、「監」の皿の部分をとって「さらかん」、「管」の竹の部分をとって「たけかん」と区別して呼ぶことがあります。

「さらかん」は設計者が行う「工事監理」を指します。「工事監理」とは建築士法第2条第7項で定義される建築士の業務で、単純化して言うと、施工契約に用いられた設計図書通りに施工が進んでいるか確認する業務です。

一方で「たけかん」は施工者が行う「工事管理」を指します。「工事管理」は施工者が行う業務で、現場監督の元請けの施工者が、下請けの専門工事会社の職人さんたちが行う工事を管理することを示します。

どのような業務委託契約書を用いるべきか

四会連合協定 建築設計・監理業務委託契約書類(小規模向け)

家の設計監理を委託する場合、そもそも契約書を交わしますか?「小さい規模だから」「面倒だから」「良く知っている人だから」と言って、契約書を取り交わさないことはありませんか?施主と建築家が良きパートナーとして業務を遂行するためにも、契約を取り交わしておくことは必須です。設計を依頼しようとしている建築家が、業務委託契約を取り交わさないでそのまま設計を進めようとしている場合は、注意したほうが良いでしょう。

設計事務所の中には、建築家協会や別の民間団体が昔発行した契約書のひな型をそのまま転用して使用している方もいるようですが、時代とともに契約約款に書かれている文言が古くなってきています。万が一問題が起こった時、施主または建築家の権利を適切に守ることができない場合があります。おすすめは、四会連合協定 建築設計・監理業務委託契約書類(小規模向け)です。これは、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会、日本建設業連合会の四会が合同で作成している、今現在日本で最も信頼が置ける契約約款と言えるものです。

ちなみに2020年4月1日より改正民法が施行されます。「瑕疵」が「契約不適合」という文言に置き換えられるのみならず、さまざまな改正が行われます。適切なフォーマットの契約書を用いることは、施主として自分自身の身を守るためにも必須です。

なおこの民法改正によって「設計図書」の役割は従来よりも大切になるでしょう。というのは、施工契約の時に「設計図書」は契約書の一部となります。「契約」が適合しているか不適合かを判断するためには、詳細が適切に書き込まれた「設計図書」が必要となります。

一級建築士・二級建築士・木造建築士の違い

先ほどふれましたが「建築家」はあくまでも呼称です。自分で「建築家」と名乗ればだれでも「建築家」です。しかしながら設計監理に関する業務委託契約においては、国家資格である「建築士」と締結することが建築士法で定められています。建築士と一口に言っても、一級建築士・二級建築士・木造建築士がいるのをご存知でしょうか。建築士法では、それぞれの建築士が行うことのできる設計・工事監理範囲が示されています。

一級建築士は国土交通大臣から免許を受け、一番オールマイティな資格です。理論的にはどのような規模の建築物も設計することが可能です。

二級建築士と木造建築士は都道府県知事から免許を受けます。ざっくり言うと、二級建築士は500㎡以下の公共建築物や13m以下の高さの木造建築物、木造建築士は2階以下の木造建築物の設計が可能です。建築設計業務を委託する場合、担当者の免許を十分に確認することが必要です。

ちなみに「建築家」は、設計・監理のみを担当するため施工者の役割を担うことは原則的にありません。一方「建築士」はあくまでも技術者に与えられる資格なので、「建築家」とともに「施工者」も保有している場合があります。「建築士」は、設計事務所のみならず、ハウスメーカーや工務店にも幅広く存在するのです。

施工者であることを戸建てプロジェクトを進めるうえで、要求条件や必要条件の整理がすみ、設計監理契約も完了した時点で、ようやく基本設計段階へと入ります。東京にて建築プロジェクトを予定されている方は、以前書いた 東京の建築設計事務所に建築設計を依頼することのメリットとデメリットについて も併せてごらんください。

 

これで設計監理業務委託契約を交わします。建築士が「重要事項説明」も行ってくれるはずです。いよいよ本格的に設計段階に入ります。

3. 基本設計(3か月)

基本設計 断面図 (実例)

基本設計とは

基本設計とはいったいどのような業務なのでしょうか。四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類の基本業務委託契約書(小規模向け)の基本設計業務を見てみましょう。

設計条件等の整理
法令上の諸条件の調査及び関連機関との打合わせ
上下水道、ガス、電力、通信等の調査及び関係機関との打合せ
基本設計方針の策定
基本設計図書の作成
概算工事費の検討
基本設計内容の委託者への説明等

つまり設計図を描くことは基本設計業務のなかの一部の業務にしかすぎません。施主に基本設計図面を提示するためには、法令上やインフラなどの調査が必要になります。ちなみに、設計業務において作成する成果図書は、以下の通りです。

仕様概要(品質、性能、メーカー、施工業者などの概要)
仕上概要(建物の内外装の仕上げの概要)
配置図(建物の配置や敷地との位置関係および方位などを描いた図面)
平面図(建物を水平方向に切断して真上から見た図)
断面図(建物を垂直方向に切断して横から見た図)
立面図(建物を真横から見た図)
構造概要(構造設計の概要)(場合による)
設備概要(設備設計の概要)(場合による)

このように平面図・立面図・断面図といった建物の形状を表す設計情報と、仕様に関する設計情報の両方を揃える必要があります。またこの場合、「外観のイメージ図」や「模型」などの作成はオプション業務となります。

基本設計がどの時点で完了するかは大変分かりずらいです。そのため私は、間取りが決定し構造壁や柱位置が確定する時点 を基本設計完了ととらえて設計を進めています。基本設計以降、大幅な構造設計の変更は発生しないことが基本設計が確定する条件となります。

要望と形の微妙な関係

基本設計や基本設計業務は、契約約款を見る限りではとてもシンプルそうです。しかしながら、これらの形状や仕様を決定していく過程で、さまざまな対話を施主と建築家で続けていく必要があります。

例えば、あなたの住宅に対する「要望」とは何でしょうか。「大きな窓」でしょうか、「収納の多いのキッチン」でしょうか、それとも「最新の音響機器」かもしれません。もうすこし引いて考えると、「暖かい/涼しい住宅」とか「地震に強い住宅」といった住宅の性能に着目しているかもしれませんね。さらに引いて考えると、「会話がはずむ住宅」とか「ほっとする住宅」といったより個人の感覚に拠る抽象的なアイデアが、本当の「要望」なのかもしれません。

住宅の新築・改修を考えている方々は、このような様々な「要望」を持っています。でも「要望」って、はっきりと示すことはできますか? 雑誌やウェブでの記事を丹念に読みこみ、実際に様々な住宅を見て回り情報収集して「要望」を明確にされているかもしれません。でも、全ての「ほしいもの」を事前に明確にするのは難しいものなのです。

設計の、特に初期の段階では、設計者との対話を通じて、今まで「ほしい」という意識には上がってこなかった「要望」がはっきりとしてくることがあります。その中で「かたち(設計案)」のイメージは、非常に重要な役割を果たします。例えば、出来上がった「かたち」を見て「こんな間取りができるのであれば、もう少し別の「要望」を追加したい」と考えることもあるでしょう。つまり、「要望」が「かたち」を生み出すばかりでなく、「かたち」が刺激となって新たな「要望」を引き出すことになります。このように住宅の新築・改修に対する「要望」は絶えず変化するわけですが、「要望」が変化し続けると「かたち」も変化し続けることになり、プロジェクトそのものが進まなくなるので、ある段階でまとめることが必要になります。

こうした様々な「要望」は、往々にして矛盾に満ちています。例えば、「明るい住宅が欲しい」という「要望」があり、「大きい窓」を設置したとします。でもこの「大きい窓」は、「地震に強い住宅」や「省エネの住宅」といった「要望」とは相反するものになります。というのも、「窓を大きくすること」は「構造壁を減らすことにより耐震性能が弱まる」や「窓からの熱損失が増えることにより空調負荷が大きくなる」を意味するためです。「要望」自体がそれぞれ関係しあい、一方を採択すれば一方が成立しなくなるわけです。悩ましい。

さらに重要な点として、「要望」の中には、コストやスケジュールといった、住宅の新築や改修をすすめるにあたっての前提条件があります。例えば、この予算であれば新築より改修する方が安い(または改修するより新築する方が安い)とか、ご家族の予定のため一定期間施工できないとかといった条件によって、そもそものプロジェクトの枠組み自体を再考しなければなりません。

住宅の設計において、設計事務所は、このように変化し続ける「要望」を整理し、「形(設計案)」として提案する役割を果たします。様々な「要望」を一つ一つ精査・勘案し、できるだけ多くを成り立たせる方法は何かを考え、あてはめながら設計を進めていきます。全ての「要望」を満たした最適解かもしれませんし、ある最も重要な「要望」だけを完璧に満たす個別解かもしれません。いずれにしても、継続的な対話を通じて施主に納得いただいた設計内容を住宅として実現していくわけです。

共通認識を持つことの重要性

設計を進める上で、住宅の新築・改修を考えている施主と設計者が、絶えず変化する「要望」について共通認識を持つことはとても重要です。この共通認識が欠落していると、「期待した要望が設計内容に表現されないため、住宅として実現しない」とか「コストやスケジュールの大幅な変更を余儀なくされる」といった問題や不満が発生することになります。

お互いの不信感を募らせないためにも、適切なコミュニケーション方法をお互いに模索する必要があります。イメージパースのように目で見てわかりやすい場合、文字やスペックの方が分かりやすい場合、実物の一部分の方が分かりやすい場合、といった様々な場合が考あるでしょう。さらに、対面式や、メールなどの間接的な方式のコミュニケーションスタイルがあります。状況に応じて、様々に使い分ける必要がありますが、施主と設計者で共通認識を常に維持し続けることが重要です。

コミュニケーションを促すために、Pinterest(写真共有ウェブサイトでユーザーはテーマ別の画像コレクションを作成し管理することができるサービス)やHouzz(外観やインテリア写真などをテーマ別に検索し保存することができるサービス)などのサイトやgoogle driveで収集したイメージ写真を共有することは大変効果的です。それらのイメージのうちで、どの部分についてどのように気に入ったのかについて話し合うことで、お互いの理解が深まります。

図面を見てその空間を立体的に想像することは、一般の方にとってなかなか難しいものです。ウォークスルーではなく360度の静止イメージであれば、VRによって施主に確認していただくことも簡単にできるでしょう。思ったより広かったとか狭かったといった感想は、実際に建設されてからでは遅いのです。前倒しの意思決定が大切です。

4. 実施設計(3か月)

実施設計 断面図(実例)

実施設計とは

実施設計とはいったいどのような業務なのでしょうか。基本設計と同様に、四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類の基本業務委託契約書(小規模向け)の実施設計業務を見てみましょう。。

委託者の要求等の確認
法令上の諸条件の調査及び関連機関との打合わせ
実施設計方針の策定
実施設計図書の作成
概算工事費の検討
実施設計内容の委託者への説明等
設計意図を正確に伝えるための質疑応答、説明
工事材料、設備機器等の選定に関する設計意図の観点からの検討、助言等

ちなみに、設計業務において作成する成果図書は、以下の通りです。

(総合)
建物概要書
仕様書(品質、性能、メーカー、施工業者などの情報)
仕上表(建物の内外装の仕上げについて書かれた表)
面積表(各部屋の面積表)
敷地案内図
配置図(建物の配置や敷地との位置関係および方位などを描いた図面)
平面図(建物を水平方向に切断して真上から見た図)
断面図(建物を垂直方向に切断して横から見た図)
立面図(建物を真横から見た図)
矩計図(建物を切断して基礎から軒先までの納まりや寸法等を細かく記入した詳細な断面図)(場合による)
展開図(各室の壁面の形状を表した立面図)(場合による)
天井伏図(部屋の天井の仕上げを床から見上げた場合の図)(場合による)
詳細図(一般図より細かく表した図)(場合による)
建具表(建具の寸法や仕上げについて書かれた表)(場合による)

(構造)
仕様書(品質、性能、メーカー、施工業者などの情報)
基礎伏図(基礎の位置や大きさを示した図)(場合による)
床伏図(床の位置や大きさを示した図)(場合による)
はり伏図(梁の位置や大きさを示した図)(場合による)
小屋伏図(屋根の小屋組みの位置や大きさを示した図)(場合による)
軸組図(建物の構造部材を立面としてあらわした図)(場合による)
構造計算書(場合による)

(設備)
仕様書(品質、性能、メーカー、施工業者などの情報)
設備位置図(電気、給排水衛生及び空調換気)

(共通)
その他確認申請に必要な図書
工事費概算書(場合による)

実施設計段階で注意すべきは、構造や設備といった専門的に分化した設計情報が追加されていくことです。ハウスメーカーや工務店では、既に施工方法がほぼ決まっているので、構造設計者や設備設計者が積極的に設計に関与することはほとんど無いようですが、設計事務所に設計を依頼する場合は、こうした専門家たちと協働して設計を進めることになります。

設計の元請けである設計事務所が担当する(総合)ですが、この契約約款では、壁断面を拡大して詳細を描いている矩計図(かなばかりず)、展開図、天井伏図、詳細図、建具表などは「場合による」となっていますが、実際はすべて作成されるべき必要最低限の図面と考えています。

外観・内観のCGパースや、完成模型、家具備品などの設計図書、外構(植栽工事等)設計図書、支給品・貸与品にかかる設計図書などは、全てオプション業務です。しかしながら、造り付け家具や簡単な外構設計については、設計業務に含まれる場合が多いと思います。

構造計算は必要なのか?

一定規模以下の木造の戸建て住宅であれば、一定の仕様を守ることによって、細かい構造計算を省略することが可能です。このような建築物について、建築基準法第6条1項四号に記載されているため「四号建築」または「四号建築の特例」と呼ばれています。

特殊建築物(建築基準法別表第1(い)欄の用途のもの):床面積100m²以下
木造:階数2以下・延面積500m²以下・高さ13m以下・軒高9m以下
木造以外:平屋・延面積200m²以下

500㎡を超える木造住宅はかなり大きくなかなか存在しないのではないでしょうか。つまりざっくり言うと、一般的な2階建てで、柱梁などで構成される「木造軸組構法」の住宅は「四号建築の特例」を受けることができると言えるでしょう。

木造軸組構法(日本建築学会ウェブサイトより)

ここで建築基準法で決められている一定の仕様を守ることが必要となりますが、具体的には、地震や台風などの外力に耐える力があるかどうか壁量の計算をしたり、耐力壁がバランスよく配置されていることを確認したり、地震や台風よって柱が土台から引き抜かれないか柱に設置される金物のチェックしたりします。これらはあくまでも簡便に確認する方法であり、構造計算は必要ではありません。

木造枠組壁構法(日本建築学会ウェブサイトより)

ちなみに北米から輸入されたツーバイフォー工法で知られる「木造枠組壁構法」でも、建築基準法で決められている一定の仕様を外れたら構造計算が必要となりますし、ログハウスで知られる「丸太組工法」では構造計算が必要となります。

建築確認申請へ

実施設計が確定した段階で、施工に先立って法的適合性を確認する必要があります。建築物を建築しようとする場合、施主は申請書により建築確認を受けて、確認済証の交付を受けなければ建築することができません。この建築確認ですが、市や区といった地方地方公共団体(特定行政庁)か、民間の確認申請機関に対して申請することになります。

市や区といった特定行政庁と民間の確認申請機関のどちらに申請するほうがよいかは、いろいろと見解が分かれるところです。一般的に、申請手数料は特定行政庁の方が民間の確認申請機関よりも安いと言われています。一方で、申請に要する時間を短縮や、建築基準法の解釈が分かれる場合より融通が利きやすいことなどから、民間の確認申請機関を利用する場合も多いです。

建築物は建築基準法のみならず消防法の対象でもあります。ある一定の免除の規定はありますが、基本的に「消防同意」を求められます。これは確認手続きの中で、建築確認申請の済証を発行することができる建築主事等から、消防長又は消防署長に同意が求められることを指します。

建築確認と消防同意のイメージ (一般社団法人東京都建築士事務所協会の会報誌『コア東京』と連携した同協会による情報発信サイトより)

こうした様々な審査を経て、ようやく建設する許可を得ることができます。

5. 施工者の選定(1か月)

希望する戸建ての家は、施工者がいないと建てることができません。ここまで、施主と設計事務所がどのように設計を進めて行くかについて書いてきましたが、実はこの施工者の選定をいつどのようにして行うかは、プロジェクトを進めていく上でとても大切です。

設計事務所に家の設計を委託するメリットの一つは、先ほど設計事務所に依頼することのメリットで書いたように、施工者各社を相見積もり比較の上選定できることでしょう。このような施工者の選定ですが、実施設計が終わった段階で行う実施設計発注と、基本設計が終わった段階で行う基本設計発注の二つがあります。

実施設計発注の場合

一般的な施工者の選定方法です。実施設計が完了した段階で施工者数社に対して相見積りをお願いします。既に設計情報は出来上がっているので、純粋にコストの比較が可能となります。施主は数社から提出される見積りを見ることによって相場観が分かり、その価格に対して納得することができます。

基本設計発注の場合

昨今のオリンピック景気や高齢化による職人不足の影響で、施工費が高騰しています。ようやく実施設計を完了させて見積もりを取ったものの、当初想定していた予算を大きく超える可能性もゼロではなく、大掛かりな設計変更がもとめられることになります。実施設計まで検討した設計が、また基本設計段階まで戻るのは、施主に対する時間の浪費となるとともに、設計チームにとっても大きな損失です。また場合によっては、その段階で手の空いている適切な施工者が見つからず何か月も待たなければならないかもしれません。

こうした状況を避けるために、基本設計が終わり実施設計にて詳細を詰める前の段階で基本設計発注し、複数の施工者に対して相見積もりを行うことも可能です。実施設計が完了しているわけではないので、正確な見積はできませんが、おおよその施工費を理解することができますし、希望する時期に施工者を確保することにもつながります。基本設計発注では見積もりの基となる設計情報が中途半端なため、価格を優先させて施工者を選定することができないのが難しいところですが、見積書に対する施工者の考え方や施工に対する取り組みがよさそうかどうか、施主と設計事務所がともに施工者をヒアリングして決定することが必要となります。当然ながら、実施設計完了時に何らかの増額が出ることになるため、なんらかの予備費を見込んでいくことになります。

基本設計発注では、施主と施工者は、何らかの覚書を交わすことになります。おって実施設計段階で詳細な見積とともに正式な施工委託契約を結ぶことになりますが、どのように進めるかは施主や施工者によって多少異なることでしょう。

見積調整

夢や希望は無限に広がりますが、望んだ予算内におさめるためには、取捨選択がつきものです。実施設計発注の場合は、フローリングなどの仕上材の仕様を落としたり、バスやキッチンなどの住宅設備機器の仕様を落としたり、内装工事や外構工事を将来工事とすることで減額していきます。基本設計発注の場合は、床面積を減らすことによって抜本的に減額することが可能となるでしょう。

見積調整時には、自分にとっての優先順位を明確にすることを求められます。将来工事とすることが難しい項目に対して優先順位を上げることが重要です。また将来工事とする場合には、いつの段階でどの程度の資金確保が可能となるのか検討する必要があります。いずれにしても、施主にとっては悩ましい選択です。

施工業務委託契約

この段階で発生する「建築主と工事施工者の工事請負約款の締結に関する業務」(工事施工者選定についての助言、工事見積徴収への対応、工事見積書内容の検討、工事請負契約締結への助言を含む)と「工事施工者が提案する代替案(VE提案等)の検討・評価」は、設計業務ではなく監理業務におけるオプション業務として扱われています。いずれにしても、これらの業務は、施主(建築主)から信頼を置いて業務委託を受けている設計事務所として、避けては通れない業務です。

建築設計監理業務委託契約書では

見積調整を行い、金額について折り合いがついた段階で、ようやく施工業務委託契約となります。施工者から細かい説明がありますが、施主の利益を代弁する専門家として、設計事務所も同席して問題が起こらないように目を光らせます。こうしてようやく着工です。

6. 施工(6か月)

地鎮祭

地鎮祭をやるかやらないか、またどの程度の規模で行うかは、施主の考え方によります。施主によっては、暦を精査されいつ何時から行うか、細かく指定される方もいらっしゃいます。また神主さんを招いてお祓いを行う必要がありますが、その方の予定によっても日時は左右されます。

住宅の場合、地鎮祭の費用は施主が負担します。費用の相場は場所によって異なります。その土地でいくつもの地鎮祭を経験している施工者や、地鎮祭を行ったことのある近所の人に聞くのが安心でしょう。

地鎮祭の式典が終了すると、直会(なおらい)と言って仕出し弁当が配られたり、近所の料理店で食事を食べたりします。飲酒運転の取り締まりの厳格化から、その場で食事をする機会も減って、仕出し弁当を配布することで終わる場合が多いようです。

上棟式

地鎮祭と同様に上棟式をやるかやらないか、またどの程度の規模で行うかは施主の考え方によります。上棟式とは、文字通り工事が「棟上げ」の状況まで終了したことを祝う式典です。「棟上げ」とは、木造の軸組在来工法において、柱・梁などの骨組みにおいて一番高いところに位置する部材である「棟木」が取り付けられて骨組みが完成したことを祝う儀式です。

上棟式は、施主と施工者との親睦を深めることを趣旨とする場合が多く、地鎮祭と異なり神主は呼ばず、棟梁に仕切ってもらうのが一般的です。木造2階建ての建物であれば、5,6人の大工さんでほぼ1日で柱梁を組み上げて上棟まで完成します。てきぱきと組み上げていく姿は、どのような現場であっても圧巻です。上棟式は行わなかったとしても、上棟の日は是非現場で様子をご覧になることをお勧めします。

施主による現地確認

自分の住宅が建ち上がっていくさまを見るのは、とても楽しいものです。施主が現場に現れることを、安全面から嫌う施工者もいるかもしれませんが、是非頻繁に工事現場を訪れることをお勧めします。熱心な施主に対して、職人さんたちは一肌脱ごうと思ってくれるでしょう。また頻繁に現場の清掃を行うようになるなど、現場も引きしめる効果がのぞめるかもしれません。

また胃袋は人の心をつかむといいます。職人さんたちも人間です。暑い夏の日には冷たい飲み物を、寒い冬の日には暖かい缶コーヒーなどを差し入れると、コミュニケーションがとりやすくなり、より気持ちよく働いてもらえるでしょう。疲れたときの飲物やお菓子は嬉しいものです。

工事監理とは

施工者主体で施工が進行する中、設計事務所は工事監理を行います。それでは工事監理とはいったいどのような業務なのでしょうか。基本設計や実施設計と同じように四会連合協定 建築設計・監理等業務委託契約書類の基本業務委託契約書(小規模向け)の監理業務を見てみましょう。

監理業務方針の説明等
設計図書等の内容の把握等
設計図書等に照らした施工図などの検討及び報告(設計図書にその旨が記載されている場合に限る)
工事と設計図書等との照合及び確認
工事と設計図書等との照合及び確認の結果報告等
工事監理報告書等の提出

先ほど契約に関する説明時に述べたように、監理とは施工契約に用いられた設計図書通りに施工が進んでいるか確認する業務です。どのように適切に工事が進んでいるか、また不適切だった場合どのように施工を是正したのかについて、施主に報告書を提出します。

さらに基本業務以外のオプション業務として、先ほどの「施工者の選定」においてあげた「建築主と工事施工者の工事請負約款の締結に関する業務」(工事施工者選定についての助言、工事見積徴収への対応、工事見積書内容の検討、工事請負契約締結への助言を含む)と「工事施工者が提案する代替案(VE提案等)の検討・評価」が含まれます。

さらに「第三者への説明・協力」「遠距離への出張・宿泊費」「常駐管理」「完成図(竣工図)等の作成及び確認」などがありますが、これらはケースバイケースでしょう。

工務店やハウスメーカーの場合、自社で設計と施工を行います。詳細な実施設計が行われていない上に、工事と設計図書などとの照合を自社で行うことにどれほどの第三者性が担保されるかについて疑問が残ります。ニュースなどを見ていても、何かしらの組織に汚職やリコールなどの問題が発生した時、組織内の人員に捜査を任せるのではなく、第三者が公正に捜査をするのが当然だと考えますが同じような話です。性善説で考えれば何の問題も起こらないのかもしれませんが、性悪説に立てば、第三者によるチェックを細かく行うことで建築物のクオリティが担保できるのであれば、それに越したことはありませんし、当然のことだと考えます。

竣工前検査は?

長い長い施工もようやく終盤を迎えました。竣工を迎えるにあたり、特定行政庁か民間の確認審査機関による完了検査を行うことが必要です。この検査済証を受領しないと、新築の建物を登記することができません。この完了検査時には、施工者とともに設計事務所も同席して確認を受けます。

また施主による竣工前検査も必要です。隅から隅まで施工状況を確認し、不具合を発見したら修正を施工者に求めましょう。施工者または設計事務所によって不具合リストを作成し、いつまでに是正するか明記しておけば、安心です。

引き渡しは?

いままで施工者に預けていた家の鍵が、ようやく施主へと引き渡されます。この時、施工者から家の取り扱い説明を受けます。設備機器の使い方に難しいのもあるので、一つ一つ細かく使い方を確認していきます。維持管理の際大切な設備機器の説明書や保証書等は、一つのファイルとしてまとめて渡してもらえることでしょう。施工した工務店が、新築/改修された家の保証元となります。

この時点から後は、施主が住宅の責任者となります。火災保険や電気・ガス・水道などの名義も変更しなくてはなりません。あとは普通の引っ越しと同じです。

7. 維持管理(数十年~)

設計事務所にとっても施工者にとっても、家の竣工及び引き渡しを迎えると一段落を迎えます。しかしながらこれで終わりではありません。維持管理をしながら長い間大切に住み続けていくことは、設計して施工することよりもよほど大切だったりします。

国土交通省国土技術政策総合研究所ウェブサイトより

建築に関するコストは、実は氷山の一角です。建築物はいったん建設されて適切にメンテナンスされると、半永久的に維持可能です。例えば、日本最古の木造建築である法隆寺は、今まで維持管理を適切に続けているため世界最古の木造建築物として存在しているのです。

修繕や増改築が必要となっているのは、建物そのものが寿命を迎えるというよりは、人生のライフステージに建物が適合しなくなって使い続けることが困難になっているからです。子供の独立や、親や配偶者の死によって、家を使用する構成メンバーが減少します。病気や老化によって、自宅での療養が必要となるかもしれません。いまから5年後や10年後を想定することはできても、20年後30年後を想定することは困難です。

変化に適応しながら住み続けていくことが大切ですが、せっかく新築または改修した住宅を、今後どのようにメンテナンスし修繕していくかについては、是非、設計監理を担当した設計事務所に相談することをお勧めします。設計を担当した建築家だからこそ、想定していなかったような提案できることがあるはずです。

8. まとめ

大変長いブログでしたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。このブログによって、一人でも多くの施主が納得した上で自分だけの住宅を手に入れることに役立つこと、さらにたとえ持ち主が変わっても長く住み続けることが可能である「良質な社会ストックとして住宅」につながることを期待します。