(2018年6月追記)
日本の地震
住宅を新築・改修する場合、地震のみならず火災リスクを十分考慮する必要があります。せっかく新築・改修しても地震で崩壊・倒壊したり二次災害の火災で全焼したら元も子もないですから。実際に地震によってどのような被害が発生するのでしょうか?まず、日本に住んでいれば慣れっこになっている地震について、もう一度考えてみましょう。
日本では地震がとても多いと言われています。日本に住んでいる人であれば、弱い地震であれば「また来たか」と気にも留めずに日常生活を送りますが、外国人旅行者にとってみれば、初めての地震にすごくびっくりするみたいですね。言われているほど日本は本当に地震大国なのかちょっと調べてみました。
ちょっとびっくりです。マグニチュード6以上の地震回数で比較すると、日本は全世界の20%もの地震回数があるのですね。当たり前として慣れている地震は、世界的に見ればとても特殊なであるということが分かります。それではなぜ日本ではこんなに地震が多いのでしょうか?
昔理科の時間に「プレートテクトニクス」という言葉を習いましたよね。地球の表面が固い岩盤(プレート)によって構成されており、それらが動くことによって地震が引き起こされるという内容でした。日本は以下のような4つのプレートに囲まれており、各プレートが動くために地震を避けて通るわけにはいきません。こんなにたくさんプレートがあるのですね。
日本周辺には、海のプレートと陸のプレートの2種類のプレートがそれぞれ2枚ずつあります。海のプレートは陸のプレートの方へ1年あたり数cmの速度で動いており、陸のプレートの下に沈み込んでいます。このため、日本周辺では、複数のプレートによって複雑な力がかかっており、世界でも有数の地震多発地帯となっています。(国土交通省四国地方整備局ウェブサイトより)
同サイトによると、地震には ①プレート境界の地震、②沈み込むプレート内の地震、③陸域の浅い地震があるそうですね。代表的な地震で言うと、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震は、プレート境界の地震だそうです。平成7年(1995年)兵庫県南部地震、平成16年(2004年)新潟県中越地震、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震は、陸域の浅い地震だそうです。いずれにしても、地震は様々な理由で頻繁に発生しているわけです。
地震でまず怖いのは、建物の崩壊・倒壊です。建築物の設計で注意すべき点は、まず「震度6強程度の地震に対して崩壊・倒壊しないこと」があげられます。半壊であれば、建物が使用不可能になっても、人の命には別状はありませんから。どのような地震の基準を前提に構造設計するかについては、別のブログで詳しく取り上げたいと思います。
次に怖いのは、建物の火事です。建物の崩壊・倒壊を免れたとしても、地震によって倒れた暖房器具が可燃物に引火して、あっという間に火の海になります。例えば、阪神淡路大震災では、7,000棟以上の建物が全焼しました(兵庫県ウェブサイトより)。古い木造住宅が密集している地域では、ただでさえ消防活動が困難なのに、地震の直後では付近まで消防車がアクセスする事すらできません。ちなみに、阪神淡路大震災では、建物の崩壊・倒壊で亡くなられた方が全体の77%で、火災で亡くなられた方が9%だそうです。ご冥福をお祈りいたします。住宅を新築・改修する場合、建物が崩壊・倒壊しないように、火災で燃えないように計画することがとても大事なことが分かりますよね。
東京における地震
日本全国で地震が発生することはわかりました。それでは、関東近郊にお住いの方に感心の高い首都直下地震はいつ起きるのでしょうか。いつ起こるか分からなくても、常に準備をしておくことは必要ですよね。国土交通省では、「M(マグニチュード)7クラスの首都直下地震について様々なタイプにおける震源想定を実施し、最も被害が大きく首都中枢機能への影響が大きいと考えられる都区部直下の都心南部直下地震を今後の対策における対象地震とする」ことによって、様々な検討が行われているようです。
この図を見ると、内陸部よりも湾岸エリアの方が震度が大きいことが分かります。基本的に埋め立て地である湾岸エリアは、内陸部よりも地盤が弱そうですよね。湾岸部のタワーマンションは安定した地盤まで杭を伸ばしている(と聞いている)ので、倒壊することはないかもしれませんが、地盤が弱いのはあまり良い気持ちはしません。
しかし、先ほど指摘したように、地震の二次災害による火災も甚大な被害を与えます。東京都は地域危険度測定調査を5年ごとに行い、各地域における地震に関する危険度を、建物の倒壊および火災について測定しています。地域危険度はそれぞれの危険度について、町丁目ごとの危険性の度合いを5つのランクに分けて、以下ように相対的に評価しています。
2018年2月に交付された「地震に関する地域危険度測定調査報告書(第8回)」にも、より詳細に状況が説明されています。下の図からは荒川及び隅田川沿いの地域一帯に分布していることが分かります。報告書によると
具体的には、足立区南部から荒川区、葛飾区西部、墨田区北部、江東区北部などの地域で
危険度が高い。そのほか、品川区南西部や大田区中央部、北区北部、豊島区北部、中野区、
杉並区東部でも危険度が高い地域がやや多くみられる
こうして見てみると、首都直下型地震において震度が大きいと予測されるところよりも、地震による崩壊・倒壊や2次災害による火災の危険性が高いところの方が、被害が大きいと予測されています。火災時に救急活動が困難なエリアであれば総合危険度は高くなります。家族の安全を守るためにも、こうしたエリアに住宅の新築・改修を計画されている方は、十分入念に地震・火災対策を進めるべきですよね。東京都では「木密地域不燃化プロジェクト」も進んでいるようですので、当建築設計事務所でもこうした情報も併せて新築・改修計画を進める必要がありますね。