「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深圳の情報がtwitterに流れてくるので以前から気になっていました。深圳がとても進んでいるという情報があります。

積極的に中国情報を発信されている「中国住み」さんのtweetとか。

 

「吉川真人@深セン起業🇨🇳リバ邸深セン住人募集🔥」さんのtweetとか。

一方で、深圳の進歩は誇張されすぎでそこまですごくないといった、Newsweekによる「「深圳すごい、日本負けた」の嘘」の記事や、「深セン行ってみたけどたいしたことなかった」といった記事もあります。

一体どちらが本当なのか前から気になっていたところ、11月初旬中国の深圳に1週間ほど滞在する機会がありました。今回のブログでは、深圳でHUAWEIやDJIのショールームや電気街「華強北」に行って、スマートハウス・ドローン・キャッシュレスについて確認したことを書きたいと思います。

急速な発展

深圳は1980年に経済特区に指定されて以来、40年程度の歴史しか持たない新しい都市です。現在では人口およそ1300万人(Wikipediaより)を誇り、平均年齢が30代とされる、香港と匹敵する経済力を持つ都市です。Huawei、DJI、フォックスコン、テンセント、ZTEなど、多くの大企業の本社が立地しています。

【広州=共同】香港メディアは27日、中国広東省深圳市の2018年の域内総生産(GDP)が隣接する香港を初めて上回ったと報じた。米中貿易摩擦の影響で中国経済の減速が鮮明になっているが、深圳市は前年比7.6%の高い成長率を記録した。深圳市のGDPは約2兆4422億元(約40兆3800億円)となり、香港を上回ったという。(2019/2/27 日本経済新聞電子版 「深圳GDP初めて香港抜く 18年、高成長」より)

中国全土で経済が減速しているというニュースを聞くことがありますが、少なくとも深圳では街中でタワークレーンが乱立し、建築ラッシュでした。人間も多く商業活動も盛んで、経済の冷え込みは全く感じることはありませんでした。このベイエリアは特に開発が進んでいるようです。

深圳のタケノコで有名な 華潤グループ本社ビル(KPF設計)を見上げる
華潤グループ本社ビルからのながめ

タクシーや電車は東京の1/3から1/4程度で安いのですが、食べ物は安くても1/2程度で、そのほかはやや安いくらいの印象です。劇的に安いという感覚は全くありません。逆に、たとえば日本酒などの日本製品は5,6倍で売られていたので、中国人の方が日本に買い物ツアーに来る気持ちも良く分かります。

洗練された洋服のきこなしをされている方も多かった印象です。ネットによる情報、購買力の向上、多くのヨーロッパブランドの出店が重なっているからでしょう。

深圳市の福田エリアにある深圳市当代艺术与城市规划馆(Museum of Contemporary Art & Planning Exhibition (MOCAPE))に行ったのですが、都市の発展についての展示をしていました1978年から2008年まで劇的に経済発展していることが分かります。

ちなみに、このMuseum of Contemporary Art & Planning Exhibition (MOCAPE)はCOOPHIMMELBLAUの設計です。

深圳市当代艺术与城市规划馆(Museum of Contemporary Art & Planning Exhibition (MOCAPE)エントランス
深圳市当代艺术与城市规划馆(Museum of Contemporary Art & Planning Exhibition (MOCAPE)
深圳市当代艺术与城市规划馆(Museum of Contemporary Art & Planning Exhibition (MOCAPE)

スマートハウスも視野に入れる HUAWEI 華為

米中経済摩擦の矢面に立つHUAWEIですが、万象天地のショッピングモールエリアにあるフラッグシップショップに行ってきました。

このエリアは東京でいうとミッドタウンのように大規模開発されたところでしょうか。商業施設では石材や金属がふんだんに使われていますし、色彩も薄いトーンに統一されています。素材を模した塩ビシートが使われていない分、日本よりも高級に感じます。広場の一角にフラッグシップショップはあります。

HUAWEIのフラッグシップショップのファサードは、カーブした3重のラミネートガラスで構成されています。

それでは中に入ってみましょう。店のカラースキームや商品の展示方法は、明らかにAppleを意識しているようです。

店内では、柱と天井がグレーのフェルトで覆われていました。吸音効果もあり色のトーンも統一できます。(不燃のフエルトではないでしょうね。。。)

机の上に商品が展示されており、若い店員が説明してくれます。2019年11月時点で最新版のMate30 Proが展示されていました(日本では2019年11月17日現在まだ発売されていないようです)。画面も精彩で美しかったです。LEICAの技術を導入したカメラも3基搭載しています。実は私は、カメラの性能に魅せられて、iPhoneではなくAndroid/Huaweiを愛用しているのですが、さらに欲しくなりました。保護ケースをつけるのが難しそうですが。。。

骨伝導で音を聞き会話できるサングラスも販売されていました。

1階から2階に上る階段では、スマホの操作講座が行われていました。若い人たちに混じり、おじいちゃんおばあちゃんたちも、熱心に使い方を学んでいました。

一番興味深かったのは、HUAWEIが提供するスマート家電です。

スピーカーや照明などに限らず、空調機の電源に中継させることによって、スマホ経由で操作を可能とする器具も売られていました。

機器同士を通信網でつなげることに意義があるスマート家電ですから、個別の家電メーカーがスマート家電を開発するのではなく、巨大通信機器会社がスマート家電に参入することによって発揮される効果は大きいでしょう。

深圳の郊外に、スマートシティを作る計画も進行中だそうです。(A look at Shenzhen and Huawei’s ‘smart city’ projectより)スマート家電で構成されるスマートハウス、さらにそれら住宅やインフラストラクチャーの情報ネットワークがつながるスマートシティとして作られることになるのでしょう。

ドローンの最大手 DJI 大疆

ドローンの最王手DJIのフラッグシップショップにも行ってきました。目立つ建物でしたが、外装の掃除が行き届かず、汚れている印象です。

中に入ってみましょう

ドローンがブンブン飛び回っているイメージを勝手に想像して店の中に入ったのですが、実際は一機も飛んでいなくて残念です。ちなみに深圳の街中でも、ドローンを飛ばしている人はいませんでした。

ドローン飛行可能ブースでは一機も飛行していませんでした。。。

様々なドローンが飾られていましたが、一番目を引いたのがこの巨大ドローンです。農業用途らしく、タンクと散布用ノズルが搭載されています。幅も1.5mほどあるでしょうか。このようなドローンに襲われたらひとたまりもありません。。。。なんとなくBoston Dynamics社の犬型ロボットを思い出しました。

ドローンに搭載されたカメラが適切に撮影できるように、ジンバルの機能も開発されています。ハッセルブラッド搭載!

面白かったのは、学習用に開発された戦車ロボットです。カタログからは、どうやら人工知能を売りにしているようですが、実際に何ができる機械/おもちゃなのかはよくわかりませんでした。日本でも購入できるようですね。子供のころから遊びながらメカやソフトウエアについて学ぶことができるのは重要ですね。将来の人材育成にもつながる試みだと思います。

Robomaster 01

 

DJIはそもそもドローンで有名ですが、ドローンを利用した映像情報の活用に力を入れている気がしました。徐々に関連事業へと拡大していくのでしょう。

HUAWEIがLEICAを子会社にしたように、DJIはHasselbladを子会社にしています。。Hasselbladは、最高級6×6cm判カメラで有名なスウェーデンのメーカーで、カメラマニアの方には有名な会社なのですが、こうした海外の有名ブランドを子会社化して、自社ブランドイメージを上げていくしたたかな戦略ですね。

深圳の電気街 華強北

深圳には秋葉原の3倍(諸説あり)と言われる電気街があります。電気街は華強北歩行街という歩行者専用道路の両側を占めています。

その中で、まずは、賽格広場に行ってみました。

エスカレータを上ると、さまざまな電子部品のパーツが売られています。

扇風機のようにLEDを回転させて3次元的に見せる機械は様々な店舗で売られていました。今、流行しているのでしょう。人目を惹く広告手法です。

回転していないとこんな感じ

次に 華強電子世界 に行ってみました。先ほどの賽格広場よりも整頓された感じです。

DELLやHPといったアメリカのブランドもあれば、なじみのない中国ブランドの商品を売る店があります。

賽格広場と同じように、ばらばらのパーツを売る店があります。

3Dプリンタも販売されていました。日本でもネット販売で様々な中国製の3Dプリンタが売られています。

ここに並べられていた3Dプリンタは、2,500元から4,500元(日本円で38,000円から70,000円)程度でした。

華強北の電気街ですが、ネット通販が盛んになり、一時ほどは盛り上がっていないと、現地の人から聞きました。しかしながら、これだけのモノと人と情報が混在するエリアだからこそ、投資が流れ込み、イノベーティブな企業が数々生まれるのだと納得しました。

先ほどのDJIも、各部品自体はそれほど高価・高性能ではないとも聞きます。入手可能な部品を組み合わせて、試作を重ねているうちに、今のような一大産業へと発展したのではないでしょうか。

小学生のころ、ゲルマニウムラジオ(若い人は分からないですよね)を組み立てるため、たびたび秋葉原の旧ラジオ会館エリアによく足を運んだのですが、あの雑多な感じをふと思い出しました。

キャッシュレスをけん引する AliPayとWeChatPay

深圳に行く前から、深圳ではAliPayWeChatPayがないと不便だと聞いていましたが、やはりその通りでした。

クレジットカードが使えるところもありますが、基本UnionPayのクレジットカードが主流で、ホテルのように外国人が利用する所でないと、VISAやMasterは使えません。

中国銀聯

コンビニや道端の商店で現金が使えないわけではないのですが、おつりが返せないと言われることも多いです。コンビニで現金で支払おうとしたら、「え現金?」と怪訝そうに言われました。さらに一元札を出したら一元硬貨でないと受け取らないとも言われてしまいました。。。

2019年11月現在、AliPayかWeChatPayの口座を開設するには、中国国内で銀行口座を持つ必要があります。旅行者でも口座開設が可能とするウェブサイトがあったので、ダメもとで2,3件の銀行に口座開設の交渉をしましたが、やはり旅行者ではだめだと断られてしまいました。

現在日本では、電子決済を推し進めています。これによって、売買を通じた商行為を適切に把握することが可能となります。以前北欧に行ったときは、VISAかMASTERを中心とした電子決済で、現金を使う機会はほとんどありませんでした。今回中国では、AliPayかWeChatPayが中心として電子決済を推し進めていることが良く分かりました。売買行為をすべてトレースできる社会というのも、かなり怖い気がしますが。

電動スクーター

以前は排気ガスで充満していた道路も、いまでは格段に改善されているようです。ガソリンの原動機付自転車はもはや存在せず、ほぼすべて電動化されています。国として方針を打ち出すと変化が速いですね。(これは宅配ボックスでしょうか?)

城中村(旧市街)の片隅では、古いガソリン式の乗り物が打ち捨てられていました。急速に社会が変化していることを物語っているようです。

深圳はいずれ香港を飲み込む?

2019年11月上旬現在、香港ではデモが続いています。深圳に在住の方の意見では、「香港のデモが常態化して香港が弱体化することによって、相対的に深圳の価値が上がることを、意図しているのではないか」といった意見もありました。過去何年にもわたり香港人が深圳の高級マンションを購入し、商業上の理由により実際に移住している人もいると言います。香港から深圳までフェリーで30分、車で40分程度(交通状態による)ですから、東京とその郊外で、神奈川・埼玉・千葉より近いといった感覚でしょうか。政治的状況はさておき、今後望むと望まざると経済的に深圳が香港を飲み込んでしまうような気もします。

参考まで「じっちゃま」のtweetより

まとめ

今回のブログでは、深圳でHUAWEIやDJIのショールームや電気街「華強北」に行って、スマートハウス・ドローン・キャッシュレスについて確認したことを書きました。やはり、

モノ・人・情報・カネ の集積は新しい価値を創造する

のだろうと実感しました。
最初は必ずしも精度が高くなくても、まずは作ってみるというラピッドプロトタイプの試みと、作りながら考えるというアジャイルな思考が実践されているような気がします(精査したわけではないですが)。

おそらく、戦後日本もモノのなかった時代に、アメリカを手本として有り合わせのモノを組み合わせて製品化していた状況に、似ているのかもしれません。

KUKAはファナック安川電機ABBグループと並んで世界4大産業用ロボットメーカーのひとつ(Wikipediaより)ですが、2016年に中国の中国の美的集団の買収提案を受け入れました。LEICAやHasselbladといった欧米メーカーを続々と買収しつつブランド力や生産力を強化させていく中国企業の力強さを目の当たりにしました。

今後、中国がどのような進歩発展を遂げるのか、チェックしていきたいと思っています。