「あえて訪れたくなるような」開かれたトイレ
Keihinjima Tsubasa Park Project

京浜島つばさ公園・緑道公園の古くなった既存のトイレ3ヶ所とシェルターとあずまやを一体的に撤去・建替えしました
DFA Design for Asia Awards 2021 - Bronze Award 受賞

既存のトイレ3ヶ所とシェルターとあずまやを一体的に更新

京浜島つばさ公園・緑道公園は、東京国際空港(羽田空港)の東対岸に位置し、都内で海を感じつつ緑に触れながら、航空機の離着陸する様子を間近に眺めることができる稀有な公園である。

釣りやバーベキューも楽しみつつ、開放的な空間でのんびりと過ごすことが出来るものの、工業専用地域内にあるという立地特性上、必ずしも誰もが日常的に通りすがり気軽に来ることができるわけではないという、知る人ぞ知る公園である。

水辺は市街地と異なり、見晴らしがよく遮るものがない。風や光を感じる心地よい場所として、もともとポテンシャルの高い場所である。

埋立地の工業団地としてとかく日常生活からかけ離れた場所となりがちな京浜島だが、現在東京都では京浜島の水辺に自転車ルートを設けることで、より親しみの持てる場所として新しく再生する計画が進んでいる。

本計画は京浜島つばさ公園・緑道公園の古くなった既存のトイレ3ヶ所とシェルターとあずまやを一体的に撤去・建替えするプロジェクトである。

各建物が自転車ルートを線的に結ぶランドマークとなるだけでなく、水辺で散歩を楽しんだり、木陰で休息できたり、対岸の羽田空港を眺めたりするような、様々な使われ方が可能となる建物群となることを目指した。

開かれたトイレへ

老朽化した既存のトイレは「暗い」「臭い」「きたない」という、よくある公園のトイレである。必要に迫られたとき以外は、できれば利用したくないと思わせる施設であった。

本計画では、便器・手洗器を備え付けた必要最低限のブースのみ閉じた空間とし、それらのプライベート空間以外を、できる限り外に開くことをこころみた。

深い屋根の軒下にゆっくり座ってたたずむベンチや飛行機を眺める展望台などの空間を併設することによって、子供からお年寄りまで多種多様な人々が「あえて訪れたくなるような」施設のあり方を模索した。

男=青、女=赤?

公共空間でトイレを設計するにあたり「男は青」で「女は赤」という色によって2分化されたトイレのあり方を再考した。

多様性を認めつつバリアフリーな空間を作るうえでは、性別に割り当てられた「青/寒色」「赤/暖色」をあえて採用せずに、サインは無彩色による表現とし、個室内のボーダータイルは、あえてこれまでの既成概念と異なる色を配した。

つばさ展望トイレでは、性別を問わずだれもが展望スペースから羽田空港への離発着の様子を楽しむことができる。

この展望デッキをかねた待合スペースから、手洗いと便器を備え付けた各トイレへ直接アクセスできるようにした。

アプローチの先に見える切り取られた景色

海や羽田空港の眺めは広くて散漫になりがちである。海に面した2ヶ所のトイレにおいては、床壁天井で視界を切り取り一枚の絵のように仕立てることにより、眺めを印象的に見せることを試みた。

つばさ広場トイレでは、軒下に伸びたアプローチを進むと、壁と屋根テーブルによって切り取られた待合の景色が目に入る。

家族や友人と共に訪れトイレに入っている間など、このベンチで外を眺めて待つことができる。大きく伸びた庇の下には、複数のベンチが設置され、思い思いに海や羽田空港を眺めつつ時を過ごすことができる。

つばさ展望トイレは、細長い公園の敷地に沿いながらもT字の交差点に面するアイストップとしての建物である。

焼杉張りの黒い外壁と左官仕上のトンネルをくぐると、水平方向に大きく広がる展望空間へと至る。この展望空間は共有の待合空間として用いられ、便器と洗面台が設置された各トイレ個室へとつながる。

シンプルな形状

広い空や海および大規模な羽田空港に対峙するこれらの小さな建物群を、できる限り単純な形体として、敷地にそっと佇ませたいと考えた。

穏やかな天候の水辺は、誰しもが行きたくなる心地よい空間となる一方、強い風雨や日光にさらされる水辺は、市街地と比較にならない過酷な環境となる。深く伸びた軒は、様々な環境下において、人々を守る役目を果たす。

海に面したつばさ広場トイレとつばさ展望トイレは、塩害を受けにくい皮膜処理がなされた金属板葺きの切妻屋根としている。

一方、かどっこトイレは、正方形の平面形状をした方形屋根としている。

形状がそれぞれ異なるものの同一の素材を採用して統一感を持たせた各施設は、それぞれがサイクリングルートを含めた周辺ネットワークの拠点となることを目指している。

焼杉の外壁

海岸沿いの敷地であり風や塩害の影響が予測されるつばさ広場トイレとつばさ展望トイレの外壁は、海の潮風に対する耐久性を高めるため杉板の表面を焼き焦がした焼杉張りとした。

焼杉は、自然素材でありながら厳しい潮風にたえる外壁仕上げ材として、漁村民家の外壁として昔から用いられてきた素材である。一方、木々に囲まれたかどっこトイレは、統一感だけを追求せずにあえて異なる仕上で多様性を表した。

ヒノキ張りの軒裏

時間の経過により見た目が損なわれるのではなく、時間を経たからこそ美しく風化するように自然素材を用いた。

東京都の公園のトイレには東京都で育った木がふさわしいと考え、奥多摩産ヒノキを使用した。

シェルターとあずまや

本計画では、トイレ以外に、既存のシェルターとあずまやも撤去・新築した。

公園の中で一番広い芝生に面したのびやかに広がる場所に、シェルターは位置する。

シェルターは、軽やかな屋根が4本の柱で支えられている。

屋根は、海風による推力が地面に向かって働くように、陸側に向かって反りあがる緩やかな円弧状の形状とした。

敷地の最南端にあるあずまやでは、既存の形状を踏襲し、正方形の平面計画と合わせた方形屋根として計画した。

2棟並んだあずまやの屋根は低く抑え、ヒノキ貼りの天井によって包まれたような空間となる。

ほんのりと灯るあかり

昼には天井に周囲の緑や水が反射し、夜には天井が照明によって照らされる。

こうして建物の屋根自体は、周囲をぼんやりと明るく灯す間接照明となる。

夜間、かどっこトイレとあずまやの天井は、間接照明によって照らされ、3棟並んだ灯台のような雰囲気を醸し出す。

静寂のなか、あずまやに明かりが灯る。

トイレとあずまやの建物群は、京浜島つばさ公園の新たな魅力を発見できる夜間ならではの景観をつくりだす。

 

DFA Design for Asia Awards は、香港デザインセンターにより設立された、アジアの視点 から優れたデザインを表彰する国際的なデザイン賞です。