20年近く前に担当したプロジェクトの仕様書データを確認しつつ、Sweetsカタログと比較参照して解説するマニアックな機会となりました。時間が経過してもMasterFormatの分類体系の思想に大きな変化は見られず、設計者・施工者・生産者を含めた建築生産体制の中で、手描き→CAD→BIMへの一貫した利活用を垣間見ることができました。
米国では、仕様書作成を専門とするSpecWriterという職能が存在します。契約社会の中で仕様書の役割は図面よりも重要度が高くknowledge managerとしての役割を果たします。環境問題が重要視される中で、LEEDなどの環境性能を実現する仕様を提供する役割も果たすこともあります。日本でも設計情報に対する「契約」への適合が求められつつあり、仕様書の役割は今まで以上に重要になると考えていますが、とかく形状情報である図面に意識が傾きがちです。
レクチャー用に記録を読み返していましたが、2018年にインタビューしたBostonのSpecWriterが「BIMモデルは属性を保有することができますが、その属性をあえてモデルに入力するアーキテクトはほとんどいません。」と答えていたことを思い出しました。今回、BIMモデルを作成することに意義があることは認めるものの、デジタル環境の推進によって業務の効率化を図ることにさらに大きな意義があることを再認識しました。つまり建設業全体のデジタル化推進において、BIM化はその一部に過ぎないということ。
まずは、機械が認識可能(machine readable)なデータ の作成をボトムアップで促していくことが大切なのではないかと考えています。